2017年3月号(No.461)

小・中学校統廃合とまちづくり

 

学校は地域社会の生活に深く関わり、地域の象徴的存在である。その小中学校が少子化の進行に伴って統廃合されている。統廃合が子どもたちに与える影響、しいては地域生活に与える影響を実例を通して考察した。また、統廃合に絡めて小中一貫校などの新たな学制の抱える問題も指摘されている。学校や公共施設の統廃合を伴って進められる地域の再編合理化に対抗するまちづくりのあり方を探りたい。

 

 

・地域の再編と小中学校の統廃合 国土と地域、公共施設の再編   中山 徹

・京都市立元町小学校の学校統廃合問題   人見 吉晴

・小中学校統廃合とまちづくり──「地方創生」がこわす地域コミュニティー  山本 由美

・子どもの遊びと生活圏からみた学校統廃合 京都市の調査から  小伊藤 亜希子

 

新建のひろば   

・第30回大会期──3回全国常任幹事会の報告  

・東京・としまち研公開勉強会(第257回 一木会)

──保井美穂氏講演「エリアマネジメントによる共創型コミュニティ構想」の報告

・京都支部──実践報告会開催

・復興支援会議ほか支援活動の記録(201711日~131日)

 

 

■連載  

《英国住宅物語2》ハウジングの原点 ──慈善的住宅改良運動と5%フィランソロピー  佐藤 健正

《創宇社建築会の時代22》建築から政治へ                     佐藤 美弥 

《新日本再生紀行6》愛知県豊田市旭地区(下)                   福田 啓次 

20世紀の建築空間遺産18シュトゥットガルト州立美術館             小林 良雄 
Work & Work3ゆいま~る福                           伴 年晶

書棚から新建叢書 大規模修繕どこまでやるのいつやるの

 

 

主張『国際社会と居住の基本的人権保障──ハビタットのアジェンダを読んで 

日本福祉大学名誉教授/新建全国幹事会副議長 片方信也

 

  新建の第30回全国研究集会in吉野(201611月)の「第一分科会 建築とまちづくり政策」で、会員の坂庭国晴さんが「人間居住と建築まちづくり政策」と題して、1976年(ハビタット)以降、20年ごとに開かれてきた国連人間居住会議第3回会議(2016年)に日本政府が行なった国別報告(ナショナル・レポート、201512月)の批判的検討を行いました。すでに坂庭さんが代表幹事をつとめる「国民の住まいを守る全国連絡会議」などの3団体が包括的な批判を展開した「見解」も発表されています(20161015日)。

 なによりもハビタットは「人間居住政策が人権を守る上で重要」としていますが、この「見解」は、「住まいに困窮する人々が大量に存在している現状に全く触れていない」うえ、住生活基本法の制定それ自体が、新規建設供給を廃止する公営住宅法の「改悪」など、「公的住宅制度の縮小、廃止」が前提であった点を指摘し、「ナショナル・レポート」が「量」から「質」への政策転換を誇張する姿勢を根本から批判しています。東日本大震災ではとくに福島第一原発事故に関しても、被災者の深刻な居住問題などについてまったく触れずに、もっぱら「『新しい東北』の創造、「世界のモデルとなる『創造と可能性ある未来社会』の形成」などの記述に終始している点も厳しく批判しています。

 ハビタットの結果について、その報告をした国土交通省のプレス・リリース(20161028日)では、「2030アジェンダを踏まえた持続可能な都市開発の可能性、都市の持続的な発展のための質の高いインフラの重要性、都市の強靱化、防災への事前投資の重要性、国土計画等のバランスのとれた国土開発の重要性等を主張した」としています。 この「2030アジェンダ」とは第70回国連総会(2015925日)で採択されたもので、その中の「宣言」では、まず、「極端な貧困を含む、あらゆる形態と様相の貧困を撲滅することが最も大きな地球規模の課題であり、持続可能な開発のための不可欠な必要条件であると認識する」との前提に立っています。その上で、2030年を目標に、あらゆる貧困と飢餓に終止符を打ち、国内的・国際的な不平等と戦いながら、平和で公正な、そして包摂的な社会をうち立てるとし、さらに人権を保護しジェンダーの平等と女性・女児の能力強化を進めること、および地球と天然資源を永続的に保護することが掲げられています。プレス・リリースは「2030アジェンダを踏まえた」といっていますが、「ナショナル・レポート」はとてもそのような視点に立っているとはいえない代物です。

 では、ハビタットで採択された「ニュー・アーバン・アジェンダ」の内容はどうでしょうか。何よりも人間の居住政策に人権保障の柱を明確にしていると同時に、難民への援助を含んだ「あらゆる形態と次元における貧困と飢餓を終わらせ、不平等をなくし、維持され包括的で持続可能な経済成長を促進し、持続的な発展への生き生きした貢献が十分に進むようにすべての女性・女児の性的平等と雇用を達成し、回復力を高めて環境を保護すると同時に人間の健康と安寧の改善が図られるよう援助する」と述べています。

 そして、こうした共通のビジョンを実現するための原則の一つに、自然と調和した健康的な生活様式の採用を含み、エコ・システムと生物多様性の保護だけでなく、クリーン・エネルギーと都市発展における土地と資源の持続可能な利用の促進による環境の持続可能性が挙げられています。

 「ニュー・アーバン・アジェンダ」の提起に、原発災害の地球環境への影響、避難にともなう人々の生活保障、汚染地におけるまちづくりのあり方などへの言及がまったく見られないなどの問題点はありますが、少なくとも日本政府の国連人間居住会議への「ナショナル・レポート」、「ハビタット」の結果報告にはそのアジェンダとはあまりにも大きな隔たりがあることは否定できません。基本的人権保障の思想に裏付けられた人間居住における国際貢献のあり方が改めて問われているといえます。