2017年11月号(No.468)

 

 分譲マンションの将来

 

分譲マンションは、専有部分を所有する区分所有者で構成する管理組合により、共用部分の維持・管理が行われる。少子・高齢化の今日、子供は独立して住まいを持ち、つきあいのある親族はなく、夫や妻に先立たれ、ついに単身になり、時に孤独死が報じられる。どう次世代へ引き継ぐか。超高齢化時代のなか「マンションの将来」について論じ、新しい取り組みの起点にしたい。

・岐路に立つ「古、遠、狭」の大規模分譲団地-加速する高齢化、停滞する住宅流通  松本 恭治
・健全なマンション管理のために-管理問題の所在と法的対処策           大江 京子
・マンションの出口戦略の現状と課題                       大木 祐悟
・超高層マンションは憧れか?リスクか?                     村島 正彦

 

◆新建のひろば
富山支部──住宅講座「2017草屋根の家」の報告
関東5支部+静岡支部共催──「新建サマーセミナー・東京BAUHAUS2017」の報告
・日本住宅会議・第33回サマーセミナー「熊本地震の被害と復興」の報告
・「新建マンションサポート研究会実践報告交流会」の報告
・第30回大会期第5回全国幹事会の報告
京都支部──第二回「伝統工法を受け継ぐ匠の話を聞く会」の報告
中部ブロック──「建築とまちづくりセミナーin牧歌の里」の報告
・復興支援会議ほか支援活動の記録(2017年9月1日~ 9月30日)

 

 

◆連載
《英国住宅物語9》マスハウジングの時代戦後パブリック・ハウジングの展開    佐藤 健正
《新日本再生紀行12》鳥取県湯梨浜町                     済藤 哲仁
《普通の景観考1》イギリス/普通の居住地                   中林 浩
 

 

主張『「戦争と平和」について大いに語ろう』

永井空間設計/新建全国常任幹事  永井幸

 

 先日、第二次世界大戦の歴史戦争映画「ダンケルク」を観ました。フランスの都市ダンケルクの海岸から撤退するイギリス軍とフランス軍をナチスドイツ軍が、容赦なく殺戮していく映画です。映像技術と大音響がものすごく、まるで私自身も戦場に居て、今にも命を奪われるような恐怖を感じました。戦場では軍艦、赤十字船、民間漁船も区別なく爆撃され、沈没していきます。武器を捨てて逃げていても、負傷していても関係なしです。敵も味方も正義もなく、あるのは死ぬか生きるかだけです。
 この恐ろしい映画を観終わって、あらためて「戦争」は絶対にダメだと思いました。いったん戦争が始まれば、簡単には止めることができません。双方とも多くの罪のない尊い命を失うだけです。太平洋戦争がそうであったように、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争……いつの時代でも世界のどこかで繰り広げられている戦争がそうでした。
 北朝鮮情勢が緊迫してきました。北朝鮮の日本上空を超えるミサイル発射は6発を数えました。また、核実験をこれまで6回繰り返し、核兵器の完成が近いと報じています。これら北朝鮮の行為は許されることではなく、北朝鮮が一刻も早く核・ミサイル開発を断念することを願います。
 しかしアメリカのトランプ大統領は「米国と同盟国を守ることを迫られれば、北朝鮮を完全に破壊する以外の選択はない」と発言し、対する金正恩朝鮮労働党委員長も挑発的な言葉の応酬をしています。安倍首相も「北朝鮮に対して、いま必要なのは対話ではなく圧力だ」と、トランプ大統領に寄り添うような発言を繰り返しています。
 このような強圧的な姿勢は、南北の緊張をますます高めてしまっていると思います。「圧力」は国連安保理の経済制裁のみならず、アメリカの圧倒的な軍事的圧力も含まれるはずです。大規模な米韓軍事演習も行われています。たとえ小規模でも偶発的衝突が生じれば、戦争に発展してしまう可能性は否定できません。ひとたび戦争になれば、どれだけ多くの犠牲者が出るかわかりません。アメリカ軍基地のある日本も巻き込まれてしまいま
す。アメリカと北朝鮮の緊張を緩和するために、日本政府はいま何ができるかを考えるべきだと思います。
 日本は唯一の被爆国として、もっと平和外交による役割を果たせるのではないでしょうか。そのためにもこの先、日本を含む東アジアの平和を一人一人が考えていかなければならないと思います。 新建憲章の第6項に「建築とまちづくり、生活と文化、自由のために平和を守ろう」とあります。「戦争と平和」についての議論や意見交換をタブー視せず、多いに進めていくべきだと思います。

  

  

「建まちひろば」より

[富山支部]-  住宅講座―2017草屋根の家―の報告

  日時:2017年8月26日(土)

  場所:富山県滑川市 有隣庵

 

平成 29 年 8 月 26 日(土)午後 に富山県滑川市(ほたるいかで 有名)の有隣庵(国登録有形文化財)1階広間で、住宅講座がありました。

 講師の前田由利氏は、木造傾斜屋根の竣工実績が50 件を越えます。「草屋根」とは、正しくは「緑化屋根」となりますが、より親しみやすくなるよう「草屋根」と呼ぶことにされたそうです。由利氏曰く「草屋根は断熱効果だけでなく、季節ごとに咲く花を楽しんだり、野菜を収穫したり。また、屋根に寝転がって、満点の星を眺めたり。雨水は、一旦、屋根の土に保水されるので、下水に流れるのに時間差ができ、都市洪水を緩和します。地球の表皮である地表が、屋根の上に皮膚移植されることにより温湿度の調整をつかさどり、虫たちなどの生態系を保存します。町全体で、屋根を緑化すると、ヒートアイランド現象の緩和につながります」と、そんな草屋根について、実施例で紹介いただきました。

 当日は滑川市の旧宿場町の古民家での講演会でして、風は通るのですが、人が30人位集まって話を聞いていると、扇風機だけでは蒸し暑く、講師は汗を拭きながら熱弁をふるっておられました。そもそものきっかけが1998年、自宅である「御影 草屋根の家」の完成に始まるそうです。建ぺい率から建築面積が12 坪しか建てられない狭小地、また北側斜線により、屋根の高さ制限があったため、子ども室を屋根裏空間にしか確保できず、夏場の環境改善のため屋根緑化を試みたのがきっかけだそうです。

 「草屋根」の目的は、まず、室内環境の向上です。大阪府立大学(当時和歌山大学)の山田宏之教授が「御影草屋根の家」の室内外の温度を測定して解析した結果によると、屋根を緑化するとアスファルトシングル葺きにした場合にくらべ、真夏に屋根からの侵入熱量が20 分の1 になるという結果が得られているとのお話です。屋根の照り返しがなく、周囲の環境を良くし、リフレッシュの場になったり、収穫を楽しんだりでき、これが広まって町が緑で覆われるようになると、ヒートアイランド現象の緩和という結果にもつながる可能性をもつ「草屋根」です。また、北欧など寒い地域でも、結構昔ながらの工法として住宅の屋上緑化があり、世界各地では古くからのポピュラーな工法であるとの話でした。

  今回、富山に来ていただいたきっかけが、スリランカのリゾート建築の先駆けであり神様のような存在、ジェフリー・バワの建築ツアーで私が由利先生とご一緒したことなのですが、バワが実践した自然派建築の理念と通ずるものを講師の心に感じました。それは、自然と人への優しさではないでしょうか。

  講演会の次の日に、富山の岩瀬から遊覧船で富山環水公園まで遊覧しましたが、立山連邦がとても綺麗に見えました。灰納屋のある古民家にお連れしたときに、咲いている珍しい植物への知見を聞いたり、環水公園の芝生の手入れがとても行き届いていることについての洞察などを聞くと、草木への知識と愛着が「草屋根」という構法のベースになっているなと思いました。

  後日講師からいただいた下記のメールで、住んでいる富山の地がいいところだと改めて感じたのも収穫でした。「おいしい水、お魚、お酒、広い土地と家。美しい立山の眺め。雪の深い生活は、私には想像できないのですが、今回巡りあった富山は、本当に幸せなところでした。また、美味しいお魚を食べに行きたいと思います」と……。

(富山支部・上梅澤保博)


[京都支部]-  第二回 ―伝統工法を受け継ぐ匠の話を聞く会

  日時:2017年9月12日(火)

  場所:京都建築専門学校よしやまち町家校舎

 

 2017年9 月12 日(火)、「伝 統工法を受け継ぐ匠の話を聞く会」第二回「和形瓦の歴史と防災性能」というタイトルで、光本大助さんにお話しをしていただきました。会場は第一回と同じく京都建築専門学校よしやまち町家校舎で、参加者は8 名でした。  

 光本さんは、光本瓦店の代表取締役だけでなく、京都府瓦工事協同組合の理事長、武庫川女子大学の実習助手などとしても忙しくされていらっしゃいます。それらの経験、さまざまな実験を元に「話のネタ」は尽きず、あっという間の1 時間半でした。武庫川女子大学の学生さんに瓦を焼かせて実際に学生に屋根を葺かせるなんていう、そんな実習はホントにうらやましい限りです。その他、瓦には3 種類ほどの土がブレンドされていて、そうしないと瓦が弱くなる、まんじゅう瓦は昔は高級品だったとか、焼き方や形状の変遷など、素材としても歴史的な関心が深まりました。(京都支部・桜井郁子)

  瓦も進化しているんだなあというのが第一印象でした。その製法は百済から伝来したのだそうです(「日本書紀」に記載があるということです)。瓦葺きの住まいは落ち着きがあって、人の感覚に合った工法というイメージがいっそう強くなりました。紹介された文献( Edwards Morse, On the Older Forms of Terra Cotta Roofing Tiles)をもとに海外の様子もこの際知りたくなりました。  

(京都支部・片方信也)


[中部ブロック]- 「建築とまちづくりセミナーin牧歌の里」

  日時:2017年9月16日(土)17日(日)

  場所:岐阜県郡上市 研修所

 

9月16 ~17日(土・日)で、「建築とまちづくりセミナーin 牧歌の里」が、岐阜県郡上市の研修所で行われた。今回の建まちセミナーは、中部ブロックとしては昨年、富山で開催されたブロック幹事会以来2 回目の取り組みだ。  

  講座は4 つ。それぞれの講座の講師は高山で地域プロデュースしている講師以外はすべて中部ブロックの新建メンバーだ。これがブロックで行われる「建まちセミナー」の特徴の一つであろう。

 大きな建築論、設計論、運動論を「聞く」のが今までの「建まちセミナー」とするならば、ブロック開催の「建まちセミナー」は、地元で取り組まれている小さくも具体的な建築論、設計論、運動論を「語り合う場」のようなものである。

 当日の参加者はのべで28 名。 富山・愛知・岐阜・長野・石川・新潟からの参加である。感じたのは参加者が全体として〝若い〞ことだ。この人たちが、これからの新建各支部の中心的メンバーとなっていくのかと思うと、うれしくなり望みが持てる。ブロックで「建まちセミナー」を行うことは、若いメンバーが参加しやすい。会場では、若い人を中心に、休憩時間や夜の交流会のあちこちで交流が行われていた。  

愛知からも最近会員になった若手が参加している。感想を聞くと「参加して良かった。皆さんの生の動きが聞けた」とのこと。講座を聞き、講座の内容や日常の仕事のことを、若手同士、ベテランと若手が語り合うには、このぐらいの規模がちょうど良いのではないかと感じた。

(愛知支部・福田啓次)

●第 1 講座   建築運動と新建活 動││仕事に役立つのか│

 講師:新建富山支部、今村彰 宏

 新建活動が仕事に結びついていくことを具体的に説明していただいた。今村氏は、名刺に新建と入れ、建築主には、新建憲章の第2 項(地域に根ざした建築とまちづくりを、住む人使う人と共同してすすめよう)を丁寧に説明する。施設建設では、建設委員会を提案し、住宅では家族全員を打合せに参加をしてもらう。建築主を「お客様」としての消費者とせず、建築主・ 設計者・施工者が対等・平等であることを説明して、仕事をしている。全国研究集会や建まちセミナー、富山支部での企画の経験を活かして仕事に利用する。建まち誌の必要なことをコピーして使う。仕事で困ったら、全国の仲間に相談をし、悩みを解決する。新しい知識を得て、仕事につなげる。まちづくり運動や震災復興活動に参加をすると、元気をいただき、自分を知ってもらい、相談をされて、仕事に結びつく。

 また、20 代の前半に職場で新建の話をして、共感をする仲間ができて、仕事をしやすくなった。新建運動のなかで、同じ悩みや怒りがエネルギーとなり、同じ思いを持った仲間や少し違った考えを持っていても共感ができる仲間が集まり、運動となっていった。

僕自身もそんな仲間を新しく増やすべく、地元愛知で「大工若手の会」や現在お付き合いのある職人さんにも新建活動の事を丁寧に説明して、少しずつでも広めていくことが必要だと強く感じた。今回、地域ブロックセミナーを開催してみて、30名程度の顔が見える参加者との交流も積極的にでき、閉会後に富山の池谷さんと次回はどこでしようかと前向きで楽しい会話もできた。そして、今年入会をした愛知支部の参加会員2 名からも、今村氏の話は非常に分かりやすく共感ができたとの声が聞けた。 

(愛知支部・甫立浩一)

●第 2 講座   クールな田舎をプ ロデースする!││SAT OYAMAの可能性││ 

      講師:山田拓氏(美ら地球代 表)(ちゅらぼしと読む)

山田氏は外資系コンサルタント会社に勤め、東京とニューヨークで働いたのち、2年間かけて世界29か国を旅したそうだ。日本に戻り、田舎に住みたいと思うようになり、2007年に飛騨古川にて「美ら地球」を設立し、里山や民家などの地域資源を活用したツーリズムを行っている。山田氏は「日本には他国にはない、歴史・文化の重厚な蓄積がある。それらが暮らしの形として具体的に残っている 農山村には日本のリアルが感じられる。観光振興においては可能性の宝庫であり、日本の農山村に必要なものは意志である」と強い想いを語った。

山田氏が関わっている里山・田舎の復興の試みは、まさに「新建」がいうまちづくりだと思う。またそれに仕事としてではあるが、新建の会員が関わってきたことはとても重要なことであったと感じた。

建築の取り巻く環境を眺めると、伝統的な木構造はほとんど見られなくなり、それに関連する職人さんも減少が止まらない。それは工芸的な職人さんもまったく同じ状況だと感じる。里山には伝統的な住宅が似合う、なにか良いヒントが隠されているように思うが、答えは見つからない。

(岐阜支部・藤吉勝弘)

●第 3 講座   地域の建築力・住まいづくりと工務店 

      講師:新建愛知支部   甫立浩 一

最初に、新建会員の7つの工務店・設計事務所を紹介され、それぞれの会社に信念があり、地域交流を大切にしていることを説明した。その地域交流がなんらかの仕事へつながるということだ。地域交流というとなにかとても難しいことに思えていたのだが、新建の憲章「1 建築とまちづくりを、社会とのつながりの中でとらえよう。2 地域に根ざした建築とまちづくりを住む人使う人と共同してすすめよう」をまさに実践しておられるということを実感した。仕事につながるという意識もありながら、楽しんで地域のなかでの交流に加わり、これからの2020年問題を深く考えていくことが必要という。

工場生産の時代が普通になり、建主さんの意識にもすべてのものが簡単にできてしまうという意識が増えてきているが、施工したものを「物」と意識するのでなく、ひとつの「作品」と意識できるものづくりができる仕事の進め方が大切と考えた。各業者さんの協力があってすべての仕事がまとまり進んでいく。お互いがお互いを必要としていくという関係が、職人さんと設計事務所、工務店、もちろん建築主、地域の人という構図が、これからの仕事に繋がりやすくなる。これからの仕事作りの勉強になった。

(石川支部・上田実和)

●第 4 講座   今の林業最前線と 野生鳥獣 

      講師:新建長野支部   久保田 淳

データから見る林業の状況と展望について、現在の山林には、使用に耐える適齢材があふれて、木材の生産量は02年ごろを底として年々回復傾向にある。木質バイオマスの利用量も順調に増加している。住宅着工数は減少傾向にあるが、木造住宅はそれほど減っていない。以上の点から、林業の先行きは明るい要因があるという見方を示した。

しかし現状の林業は国内の木材需要の急激な落ち込みと価格競争、物価上昇に対して、木材の価格がそれほど上がらないため、山から木を切り出して市場に流しても赤字になってしまう。そんな厳しい状況のなか、林業再生の土台となる現場環境を改善する取り組みが紹介された。最新の機械の導入促進と作業道の改善整備。ほかには、丸太をストックする土場を確保し、市場に流す丸太を仕分けすること。それとバイオマス事業だ。また、補助金依存の体質からの脱却を模索している林業者の試みについても紹介された。

次に、林業と深い関係にある 野生鳥獣の話しとなった。本来、山は鹿や猪、熊や狸ほか、さまざまな野生生物の生活の場だが、その野生生物が増えている。農業離れから里山が荒れ、山の環境を人が作り替えたため、山に近い土地で農業や林業に動物被 害が目立つようになった。林業での動物被害の主なものは、樹皮が剥かれることで、樹木の生育や丸太の品質に影響が出る。対策は、狩猟などによる野生鳥獣の頭数統制だが、狩猟者が高齢化し、新規の狩猟者も少ないなど課題が残る。流行の兆しのあるジビエ料理も、事業としてはなかなか採算がとれないようだ。 

(富山支部・岩脇崇)

●交流会報告

セミナーの楽しみの一つである交流会は、一日目の第2 講座 終了後に行われた。セミナーでは交流会も大事な企画だ。あいにくの天候により屋外のバーベキュー施設を使用せずに室内で行った。飛騨牛が目玉料理である。飲み物は十分に用意されており、各地から持ち寄った日本酒、ビール、ワインが机に勢揃い。広い会場に手頃な人数でお互いの顔が良く見えて、仕事や、各地の状況をおおいに語り合った。他の会と違い、新建では他人の話を良く聴き、自分も話を進んでしたくなる場となるので大変楽しく過ごせ、交流が十分できた。

私は昨年に引き続き家族3 人で参加したが、家族もおおいに楽しんだようだ。第2 講座の講師の山田さんも参加していただき、講座内容をさらに深めることができた。区切りとして一本締めにて一次会を終了し、酒に強い参加者により同じ会場で12 時頃まで二次会が盛大に行われた。 ※詳しくは富山支部の『ゆるゐ』 参照

(長野支部・市川義雄)


関東 5 支部+静岡支部共催

 - 新建サマーセミナー・ 東京BAUHAUS2017―の報告

  日時:2017年8月26日(土)27日(日)

  場所:専門学校 「ISCカレッジ・オブ・アーツ」

 

 今回のセミナーは、関東5 支部と静岡支部の共催で 8月26 日(土)と 27 日(日)の二日間、東京、世田谷区にある専門学校 「ISCカレッジ・オブ・アーツ」を会場に開催されました。

 

 参加者は、東京 44 名、静岡 9 名、神 奈川 4 名、群馬 4 名、千葉 3 名、埼玉 3 名、その他に、全国1 名、京都2 名、一般 9 名、学生2 名、講師 5 名でした。1 講座でも参加した人はのべ 86 名になりました。

  講座は第1 日目 4 講座、二日目 2 講座で、1 日目の終了後には交流会を行いました。以下、各講座の概略を報告します。

 

●講座 1  インテリア・家具の デザイナー、職人を育てる教育を実践する

     講師:丸谷博男(ISCカレッジ・オブ・アーツ学長・エコハウス研究会代表)

 丸谷学長は、68 歳で芸大の非 常勤講師を退職、建築・設計・デザインすべてができる職人を育てようとこの専門学校学長に就任しました。ここは250人の若い職人とその卵の熱気のうずまく場、半数はアジアからの学生で、「留学生のハングリー精神が日本人の若者の熱気に火をつける」とのこと。この学校は、これまで半世紀以上に渡り建築・インテリア界に6000人以上を輩出してきた実績があります。積極的な産学連携を行い、実際の物件を使い実物大の住宅を造り上げる教育、林業の方達との交流、製材所や木材試験センターの見学など、体験型・実践的な教育の場を提供しています。「物を見たら、どうしてこうなっているのか見えないことを考え、手を通して表現する。徹底的にこの訓練」。これらが血肉になるのだと思います。また「原点は人間と自然を愛する心」であり「デザインと創造は思いやり」であること、人や生活、歴史、材料、環境、廃棄、循環にも心が配れる人を育て、「平和だからこそ自由にデザインして自由に表現できる」ことを伝えていきたいと話されました。

 

●講座 2   日本の建築運動と建 築活動 

     講師:片方信也(新建全国幹 事会副議長・日本福祉大学名 誉教授)

 片方先生は、現役の建築系の大学院生や若い教官たちが戦前の「新興建築家連盟」や「創宇社建築会」「青年建築家クラブ」などを取り上げた論文に関心を払ってきました。今の若い人たちが「建築運動」を新しい視点でとらえている様子を調べられ、また戦前戦後の当時の技術者たちがどのような社会的背景から運動を起こし解散へと至ったか、原因を深く考察されています。そもそも「建築運動」の定義があるのでなく、「さまざまな人々の意思が一致して社会に対して意義ある一つの方向に凝集してゆくとき、その運動の力と意義 はぬくことのできない存在となる」という論文からの解説は、自分の中にストンと落ちたような思いがしました。片方先生は「京都計画 '88 」で市民運動の力が京都全体のビジョンを示すことにつながったことで、実体験として建築運動の意義を感じてこられたのだなと思いました。

 「建築活動」として日々どうあるべきかを示すものとして、萩原正道さんの遺稿集『誰のための何のための建築か』が分かりやすいと紹介されました。「生活者の要求に敏感になる努力」「要求に応えられる技術を身に付ける努力」「幅広いコーディネイト能力を身に付ける努力」。歴史に学び将来に繋げることを改めて考える時間でした。

 

●講座 3   熊本地震から学ぶ木造住宅の耐震性

     講師:宮澤健二(工学院大学 建築学科名誉教授)

 宮澤健二先生は、木質住宅の構造がご専門で、工学院大学防災環境研究センター長もされた木造住宅の耐震性に関する第一人者です。熊本地震発生後、すぐ現地に入り、倒壊・崩壊した住宅のうち、最新の耐震基準が適用された2000年以降の新築住宅に着目、30 棟以上を5 日 間にわたって視察され、うち7 棟の設計図面を施主の協力を得て調べ「どれもなぜ倒壊したか説明がつきます」と指摘されました。被害住宅の特徴として、「地盤崩壊(軟弱地盤、擁壁・ 盛土造成)」「筋交いのみで構造用合板を使っていない」「HD金物配置ミス、使用箇所小」「構造計画の不適切(壁量ギリギリ、偏心率及び柱」「耐力壁の直下率不足、下屋水平構面耐力不足)」「施工ミス(工事中の筋かい切欠き、大きな節、釘・ビスの打ち間違い、金物付け忘れ)」「新しい課題(ほぞのせん断破壊、集成材筋かいの破断)」を挙げ、特に被害の軽微だった住宅と比較すると「構造計画の不適切」部分での差が大きく見られたと のことです。

  木造構造の基本的な考え方から、建築基準法や品確法の押えどころはどこかなども含めお話されました。設計・監理、施工を行う上で、法律対応だけではない構造的な計画ができる視点が重要で、さらに施工者ともに現場への理解とミスをなくす工 夫が必要だなと思いました。

 

●講座 4   少子高齢化のこれからの社会の住まいの形態・環 境を考える 

     講師:藤本昌也(㈱現代建築 研究所取締役会長)

  スモールコミュニティ、コモンスペース、オール参加型が少子高齢化社会時代を救う!!

  日本建築士会連合会会長を勤められた藤本昌也さんは、豊かな実績をお持ちの建築とまちの設計者です。国土交通省の肝いりで住宅生産振興財団が主催する「住まいとまちなみコンクール」の審査委員長を10 年以上 続けてこられました。コンクールでは「福岡県青葉台ボンエルフ団地」とか「兵庫県フラワータウン  アルカディア 21 」とかが大臣表彰を受けています。  

藤本さんは「このコンクールはいつも新しいなにかを気付かせてくれたのですが、コンクールが始まって10 年たったころから世の中も応募作品も変わってきました」と言われます。住宅地の設計は今後こういう方向に変わっていかねばいけないとお考えのことは、キーワード的に言えば、「スモールコミュニティ」「コモンスペース」「オール参加型」です。そのあたりを美しいスライドで各地の街並みを紹介しながらお話しいただきました。

 

●講座 5   国産材の杉でつくるインテリア・家具、その取り組みと教訓 

     講師:小田原健(家具デザイ ナー・ARTISAN代表)

 小田原さんは、子ども時代からしっかり修行を積んだ木工職人として、樹木の性質を理解して仕事ができる実力を芸大の吉村順三先生に見いだされ、芸大の家具デザイン担当として22 年 勤められました。安価な輸入材に押され日本の針葉樹(杉、ひのき、からまつ)が使われていない現状があり、そこを変えていくために活動されています。

  長野県が財政難のころ、財産は「山にあるからまつ」と訴え、「からまつはゴミだよ」と各所で言われても、からまつの性質を知ってデザインすればよいのであって、木が反るなら反らない仕口を考えるなどして、みずからもデザインし活用の販路を見出し、県知事室にもからまつを採用するまでに変えていきました。

  世界の森林の状況も多く見学されていて、日本の商社の違法伐採を食い止めたいと言われます。安価なゴムの木を生産出荷のために使われる大量の薬剤など地球を汚している実態を伺いました。「ECOの原点は生態系から考えないと駄目。海を汚さないために森林を大事にする」との言葉が印象に残りました。

  講座後、小田原さんが協力している会場近くの家具のショールームを見学しました。

 

●講座 6   山と里が共同した家づくりを経験して、今思うこと 

     講師:伊佐裕(伊佐ホームズ ㈱代表)

伊佐ホームズは、世田谷区・目黒区を中心に、設計者が直接施主の方々の要望を汲み取り、 営業がきめ細かくサポート、施工は信頼関係を築いた協力工務店とともに家づくりを行っています。15 年ほど前から国産材を使う取り組みを始め、2015 年、森を育てる人々と住まい手を結びつける国産材による家づくりを本格化させています。

  伊佐社長の話を聞いた後、炎天下長距離歩いて「伊佐ホームズのショールーム」を見学しました。正直言って「伊佐ホームズ」の商売のやり方は新建の理念とは関係ないように私には思えます。伊佐社長の講演も、国産材を使うことへの哲学・経済的判断などに注意を払って聞いていたのですが分かりませんでした。ただ、見学したショールームはデザインの傾向にちょっと「芸大風」の感じと「品」があり、勉強になりました。

  以上、6 講座でした。交流会の模様は写真をご参照ください。

(東京支部・片柳順平・木村美千代)

 

【参加者の感想】

▼キャッチーなタイトルが魅力的だった催し、東京BAUH AUSの参加申し込みに際して は、「そういえば本家バウハウスのことをあんまりよく知らないよなぁ」という少々締まらないような気分でいたことを思い出します。

 はたして全講座を受けてみれば、大変広域にわたる内容を新建というハブで繋いだらしい感じのセミナーでした。というわけで、それぞれの講座の内容にて学んだこととともに、とりわけ強く感じたことは、講師陣の 訴求力・推進力・能力の高さ・強靭なリーダーシップでした。

 一方講座2 では、片方先生が高橋寿男さんの言論や遍歴を紹介され、それが現在若い研究者たちの偏見のないまなざしを通して評価される動きがある、と教えて下さいました。運動体・新建に属している自覚はありつつ、運動ということがわかっていない自分ながら心強く受け取りました。造形教育の記念碑的存在にしてモダニズムの象徴、と標語のように覚えているバウハウスが営まれたころに、遠く日本でも建築運動が萌えたのだ、あ、そういうことでも、のバウ ハウス?だったの、と今頃思ったりして。すみません……。

 そして、そもそもモダニズムとはどういうことだったのか、いささかも捕まえていない相変わらずの自分がここに。

(静岡支部・本多ゆかり)

 

▼震災後に発覚した熊本の木造住宅の特徴は、そのほとんどが筋交いだけで構造用合板が使用されていないことや、柱脚引き抜き防止ホールダウン金物の使用個数が少ないことなどさまざまである。構造計画の不適切や施工ミスが目立ち、想定外の地震波が二度、押し寄せたことを鑑みれば被害率は高いとは言えないのかもしれないが、それで反省すべき点も多かったようだ。

  建まちセミナーで、工学院大学の名誉教授、宮澤健二氏の講話を聴き、設計地震力の定められ方やその他さまざまな問題を、熊本地震を事例に学びながら、私は一年半前の熊本の人々のことを思い出していた。地震発生直後、当時学生だった私も現地に向かい、被災地の子どもたちのサポートに徹した。数か所の避難所を渡り、多くの子どもたちや保護者、地域の方々と触れ合うなかで、私がもっとも多く耳にした言葉は「早くわが家に帰りたい」という切実な願いだった。

  「設計者である以上、このような設計はいかがなものか」「住まう人が使い続けられるような 建築を」、どちらもこの世界に入ってからよく耳にするようになった言葉である。建主ひとりひとりにしっかり向き合いながらも、技術者としての姿勢や知識を日頃から研鑽し、設計に活かしていくことが、被災地の人々の安心で安全な生活の保障につながる。そのためにも、学び続ける努力を惜しみたくないなと改めて感じることができた、充実した二日間であった。 

 (東京支部・澤田大)