2018年2月号(No.471)

地域に生きる建築まちづくりの展開──第12回新建賞

 

昨年11月の第31回新建全国大会で、第12回の新建賞が選出された。今回は全国から27点の応募があった。これは各地での建築まちづくり活動の拡がりを表している。その中から選出された9点は、こうした建まち運動のこれからのあるべき方向を示すものと、審査委員が判断したのである。社会状況は建築家技術者にとって厳しいものがあるが、地域に生きてきらりと光るこうした活動を広く展開していきたい。

・新建賞への期待と要望  久永 雅敏
・大賞を受賞して-防災集団移転による被災者主体の新しいまちづくりの記録を出版    杉山 昇
・〈正賞受賞作〉公益財団法人南観音山保存会と地権者による町家と袋小路建替事業    富永 斉美
・正賞を受賞して-「特養よりあいの森」地域との関係のつくり方            大坪 克也
・正賞を受賞して-横丁からふたたび、あたらしいマチをつくる「COMICHI石巻」     野田 明宏
・〈奨励賞受賞作〉住民主体の土地区画整理事業で進めた共同建替え事業(埼玉県川口市里地区)  

                    木下 龍郎+江國 智洋+尾上 健一郎+木村 美千代 内藤 芳治+籏智 啓
・〈奨励賞受賞作〉マンションデモクラシーで100年住みつづける           千代崎 一夫+山下 千佳
・〈奨励賞受賞作〉地域と共に生きる                        藤見 赳夫
・奨励賞を受賞して-「Life 1000」予算を踏まえながら住み手の要求を形に       中安 博司

 

 

 

◆新建のひろば

・「災害対策全国交流集会2017in東京」の報告
・福岡支部─「第5回仕事を語る会」の報告
・「日本住宅会議2017年度総会・シンポジウム──住宅過剰供給、住まいの貧困の解決に向けて」の報告
・復興支援会議ほか支援活動の記録(2017年12月1日~ 12月31日)

 

◆連載
《英国住宅物語12》ハウジングの方向転換 1968年以降/脱近代への試み    佐藤 健正
《書棚から》建築意匠講義                        
《普通の景観考4》神戸・乙仲通                       中林 浩
《創宇社建築会の時代30》NAU建築運動史講座と集団的共同設計        佐藤 美弥

 


  

主張『地域製材業との連携の道を探ろう』

ゆま空間設計/新建全国常任幹事  加瀬澤文芳

 

 古民家再生に携わっていると、都市近郊の山林と地域製材業が抱える重い課題が見えてくる。もちろん根本に農業と農村後継問題があるのであるが、ここではひとまず置く。
 私自身が近年かかわったケースでは、親が亡くなり相続をする段になって長男は相続放棄、兄弟三人が話し合って次男が受け継ぐことになった。次男は私財をつぎ込んで古民家に思い切った改修をして再生した。車で一時間ほどの町に住んでいるが、生まれ育った家に愛着が強く、ほとんどの時間を実家で過ごす。町の自宅に帰るのは週末だけだ。まわりは所有する田畑、山林があり、収穫やら屋敷の管理で一年中急がしい。定年退職後ののんびりとした暮らしは一変し、多忙だが充実した毎日を過ごしている。
 農地はできる範囲で耕せばよいし、残っている部落の働き手に貸すこともできる。悩ましいのは山林で、ほとんど放置された状態だった。かつて林業を営んでいた山は良質の杉桧が育っているが、そのままにしていると溝腐れ病が蔓延してしまう。実際かなり進行していた。健全な木でも百年以上の杉は高木になり、強風で倒れて付近の民家に被害をおよぼすことがある。そこで山林の手入れと古民家再生をあわせて行おうと考えた。
 クライアントが私に仕事を依頼したのは、相談していたハウスメーカーに、自分の山の木を使って民家再生をしたいという希望を断られたからだった。伝統技術を売りにする名のある住宅産業だったが、裏山の木の伐倒製材からという要求には対応できなかった。このようなケースでは施工者の選定がすべてになる。地域で製材業を営む施工者を選び依頼した。紆余曲折を経て完成したが、口径一メートル近くの巨木の伐倒が圧巻だった。製材すると良質で見事な材料が揃った。
 この現場では適切な地域の製材業者を選定することで結果は得られたが、山林と地域製材業の抱える問題は深刻だ。昔は地域の製材業者が近隣の個人林から材木を伐りだし、地域の工務店に流して家を建てる仕組みができていた。わずかとはいえそれが小規模な山持ちの収入にもなっていたのだが、木材価格の下落や大規模製材工場によるプレカットが地方でも定着し、製材業者の仕事はなくなってしまった。自己防衛のために自ら建設業をしているのが実情である。八〇社ほどあった地域の木材組合の事業者は、二〇年ほどで半分に減り、その中で製材を続けているのは一〇社足らずという。
 民家再生の仕事を経験していると、その素晴らしさに魅せられてしまう。古民家のポテンシャルの高さは尋常ではない。設計に際しては、間取りの欠点を直しながらもあまり手を加えず、本来あった形に戻すよう配慮しながら整える程度の気持ちでのぞむ。できあがった住宅はハウスメーカーには到底まねのできない、質の高い水準のものとなる。それが地域の製材業者と連携することで、比較的リーズナブルなコストで可能なのだ。
 小規模の山林を対象に、伐採から植林までの事業を補助する林野庁の制度があり、前向きに取り組む製材業者もいる。放置山林の維持保全のためにも、地域製材業をこのまま過去の産業形態だと衰退していくのを傍観していてよいはずがない。設計者も彼らと連携する道を探るべきであろう。
 プレカットとメーカーによる既成造作部材による建設が一般的になり、大工職人の伝統的技術は失われつつある。ベテランの大工でも道具を管理していない。小さな部材に鉋をかけることもできない。そもそもクライアントが、自然素材や無垢材でつくる家は特別なものだとして望まない。
 そんな状況の中で、町場の設計者がハウスメーカーと同じレベルの住宅を造っていては生きていけない。古民家再生は伝統技術と自然素材を駆使してつくる仕事であり、私たち設計者に共通の課題として追及していきたいと思う。

 

 


  

「建まちひろば」より

「災害対策全国交流集会 2017 in 東京」の報告

  日時:2017年11月10日(金)〜 11日(土)

  場所:北区の北とぴあ

  参加者: 20 都府県から200名

 

11 月 10 日(金)〜 11 日(土)、全国災対連の「災害対策全国交流集会2017 in 東京」が北区の北とぴあで開催されました。参加者は 20 都府県から200名。会場は、ほぼいっぱいで活気ある 2 日間になりました。 

新建からは 10 日は鈴木浩さん、鎌田一夫さん、村岡正嗣さん、岡田昭人さん、木下龍郎さん、丸山豊さん、 10 日・ 11 日の 2 日間は 杉山昇さん、三浦史郎さん、 11 日·見学会は井上文さん、フルに参加は岩渕善弘さん、新井隆夫さん、千代崎一夫さん、山下でした。

 はじめに、岩手·宮城·福島 ·常総市·熊本·福岡から被災地の報告がありました。医療費 の減免の打ち切りにより、病院にかかれないという深刻さから、自然災害から人災を生んでいる実態がわかり、さらに運動を強化する必要性を実感しました。熊本地震で直後に亡くなった方は 50 名、関連死の方は、その 3 倍を超す200名にもなっているそうです。まずは、災害時に命を落とすことがないようにすること、そしてその後の生活再建がどれだけ住民のために進むのかが、命にまで関わることが報告でわかりました。毎年、被災地が増えていることから、災害の多さと災対連が重要であるという意見が各地域から出され、拍手がわきました。

 報告のあと、 5 つの分科会があり、新建メンバーはそれぞれに分かれて参加し、報告やコーディネート、発言などをしました。第 1 分科会は「被災者本位の復興と支援」をテーマに、被災者の復興をはばむ創造的復興や人間復興をめざす災対連運動の役割について。第 2 分科会は「災害対策のための法整備の課題」として、災害対策基本法や災害対策救助法などの法整備の課題について。第 3 分科会は「福島原発事故と原発再稼働を考える」では、被災地の実態と復興の課題や原発再稼働に抗する運動について。第 4 分科会は「地震に備える」、各地でひろがる防災のとりくみや公的責任で地震に負けない地域·まちづくりを。第 5 分科会では「異常気象と風水害」で、異常気象のもとで多発する風水害に備える課題について。

 分科会の後は懇親会。私は板橋のフルート仲間と被災地の映像とともに、オープニング演奏をさせてもらいました。懇親会終了後に、新建災害復興支援会議を 1 階のお店で 1 時間程度開催しました。

 11 日は 9 時から東大地震研究所の平田直氏(地震予知研究センター長)の記念講演。「日本周辺では、M7規模の地震が年1 〜 2 回起きている。現在の地震学は大地震が起きたらどうなるかは想定できても、いつどこで起きるかは予知できない。地震予知を前提とした大規模地震対策特別措置法にもとづく防災対策を見直す必要がある。地震でいうと 20 %の確率というのは、非常に大きいと言っていい。どこで地震が起きてもいいように、科学的な実力を生かして、社会全体で備えることが大切」と強調されました。事前防災と事後防災について、私は感銘しました。

 見学会は、「関東大震災メモリアルバスツアー」、白鬚東防災拠点·墨田区横網町公園(復 興記念館·慰霊堂·朝鮮人犠牲追悼碑)·豊洲新市場予定地·東京消防庁本所防災館をまわりました。防災館では体験ツアーがありました。革新都政時代につくられた実績を見て、首長と自治体の責任と役割についても体験できたツアーでした。

 今まで、被災地で行っていた災害交流集会を被災地ではない東京で行うことに、被災地の復興が道半ばであるのに、被災地でやらなくてよいかなど、いろいろな意見がありました。 2 日間を通して、平田氏の講演を聴いてもらうなど、東京の開催であったからこそ、今までとは違ったスタイルの取り組みもできたと思います。実行委員会を通して新建は一翼を担い、役割を果たすことができました。引き続き、渉外活動として位置づけ、多くの会員が関わりを持てるようにしたいと思います。

(東京支部·新建災害復興支援会議 事務局次長·山下千佳)


[福岡支部]-  「第5回 仕事を語る会」

  日時:2017年12月5日(火)19:00~20:45

  場所:福中協 陽だまりホール (福岡市東区社領1-2-9)

  参加:会員13名 会員外10名 計23名

 

福岡支部の2017年最後の例会は、 12 月 5 日に福中協の陽だまりホールにて「第 5 回仕事を語る会」を開催しました。参加者は会員 13 名、会員外 10 名の 計 23 名でした。

今回は、長年にわたり温もりのある木の住まいを提案してこられた、福岡中小建設業協同組合(福中協)の大里さんにご登場いただきました。

 古い会員である大里さんですが、初めてお聞きすることばかりで、協同組合組織での工事受注はどうなっているのか、運営はどうなっているのか興味津々でした。空港周辺住宅の防音工事を中小の工務店で受注するためにできたのが始まりだそうで、防音工事終了で組合員も減少したとのこと。OM協会で住宅デザインを学び、加入組合員のなかで不公平感が出ないように、詳細図をしっかり描いて、入札で担当組合員を決定する。逆に組合員から教わることも多く、発足から現在に至るまでのことを知るにつれ、新建の理念がしっかり根付いて、しかも広い視野、広い繋がりを常に求めておられ、一生懸命に協同組合組織を現代の難しい時代に合わせて、守り発展させておられる姿勢には感動しました。

 また、福中協を中心として九州北部豪雨で大きな被害を受けた、東峰村の旧宝珠山小学校の校庭に木造仮設住宅を 7 月中旬から着手され、この職人さん不足の、しかも猛暑のなか、約 1 カ月で建設した時のこともお話しいただきました。あの大きく崩れた山肌や、木材市場かと見まがうばかりの杉の丸太の山のなかで、使命感に燃えて奔走されたことに敬意を表します。熊本の木造仮設の基礎は長期にわたることが予想され、コンクリートも見受けられましたが、ここでは束建てでした。また入居ある程度はご家族の要望に沿うことも可能だったそうです。その後も、集会場や追加の仮設住宅も建設されています。

語る会の後の懇親会も福中協の「陽だまりホール」の、木に囲まれた素晴らしい雰囲気のな かで行われました。都合により早めに失礼いたしましたが、嬉しいことに「二人の新会員」の 加入があったとのこと。講師や会員の方の、長年の仕事や新建への取り組みを学ぶことができ、また新しいお仲間も増えて、良い年末の例会になりました。大里さん、職員のみなさま、お世話になりました。あらためて新建のメンバーの素晴らしさを知ったひと時でした 。

(福岡支部・渋田あい子)