2018年3月号(No.472)

被災地福島の現実と原発再稼働の無謀

 

東電福島第1原発の事故から丸6年を経た昨年(2017年)3月に、国は「予定通り」一部地域を除いて避難指示を解除した。これによって、被災者は帰還するか否かが現実的な選択肢となり、再建・復興がいよいよスタートし得る。ところが、国や東電は復旧が一段落したかのような扱いを始めている。加えて全国各地での原発再稼動である。人類史に記録されるべき大事故を風化させ、覆い隠してはならない。矛盾を抱えた現実は今も進行中である。

・原発事故被災地は今どうなっているのか─福島県浪江町の現地視察報告     浅井 義泰+鎌田 一夫

・東日本大震災より七年が経過して─現実を直視して、知恵を出しあう時に    原田 雄一

・帰還して生活再建とまちの復興をめざす                            佐藤 秀三

・改めて、原発事故避難指示区域の復興とは                   間野 博

・原発再稼働が抱える重大な危険                       岩井 孝

・脱原発・脱炭素社会の設計は地方自治体から─原発なくそう!九州玄海訴訟    長谷川 照

 

◆新建のひろば

・愛知支部──「古民家改修オープンハウス見学会」の報告
・第31回大会第1回常任幹事会の報告
・京都支部──「実践報告会」の報告
・福岡支部──1月例会「建物再生の可能性を探る」の報告
・北海道支部──「2017仕事を語る会」および「札幌版次世代住宅見学会」の報告
・復興支援会議ほか支援活動の記録(2018年1月1日~ 1月31日)

 

◆連載
《英国住宅物語13》ハウジングの方向転換 コミュニティ重視のハウジングへ    佐藤 健正
《普通の景観考5》かつての問屋街・伊勢河崎                   中林 浩
《創宇社建築会の時代31》NAUの後に続くもの─1950年代以降の建築家グループ─   佐藤 美弥

  

主張『障害者が普通に住まい働く、街中の場所づくりをめざして』

アート設計事務所/新建全国常任幹事 星 厚裕

 

 最近の業務のなかで、知的障害者のグループホームの設計に係わることが多くなってきた。
 施主側(社会福祉法人が多い)のグループホームへの要望はさまざまである。入所施設を運営している法人の場合では、グループホームへの要望として、防災上の設備以外は、個室があり、食堂や水まわりなどの共用部は一般的な住宅の要望とさほど変わりはない。壁や床や家具、設備機器などなるべく壊れないように、傷まないように気を配る程度である。したがって、街中であっても近隣の住宅と同じような外観で、景観的には溶け込めるような計画が可能である。
 数年前からこのようなグループホームではない形の要望が増えてきた。入所施設を運営していない作業所の運営のみの社会福祉法人では、グループホームへの要望が車椅子利用者の利用を前提にしたものになっている。グループホームの定員は10名以下、世話人が1名という規定であるが、車いす利用者が前提となると居室はもとより、廊下、便所、食堂など共用部もすべて空間が広くなり、同じ利用者人数でも規模が大きくなってしまう。当然世話人も数名が必要になる。景観的にも、住宅には見られない避難上の設備が必要になり、やはり住宅というよりは「施設」のように見える外観になってしまう。
 障害者が「街中で住まう」ということは特別なことではなく普通のことなので、計画も普通に見えるようにしていきたい。グループホームでは、「地域に住んで、作業所に働きに行く」という、私たちと同じようにごく普通の生活が営めるのであるが、今後の問題として、年齢を重ね高齢になったとしても住み続けることはできるのであり、このまま高齢者の住宅として移行できる。経営上の問題は運営法人の課題として、「住む場」としてより良いものをつくっていきたい。
 福祉施設の計画では、国庫の補助金がついて回るが、最近の傾向として、補助金の確定を7月として工程を考えるということを要求され、大変困った問題として受け止めている。補助金確定の通知がないと、調査や設計、工事の契約ができず、これを守れる規模の計画は良いが、少し大型の物件でも年度内の工期として完成、引き渡しを要求される。鉄筋コンクリート造の建物ではこの工期が守れない工程になるが、なんとしても年度内工期の計画を要求される。
 計画は事前に進めることは可能なので、問題はない。設計も可能であるが、諸手続きは確定通知以後にしか進めることはできないので、開発許可からの計画ではどうしても着工が遅くなり、工期不足になる。補助金を出す側の官庁関係の担当者でも理解はしているようだが、なんともならないという。
 この矛盾は、建物を施工する立場の関係者は毎回頭を悩ますが、輪をかけるのが天候不順による影響で、関東では雪が積もるほど降ると現場の作業は遅れるため、完全に工期は守れない状況となる。福祉の予算執行がここ数年、予算を下回り、その残りを次年度内で執行するということが繰り返されており、なおさら年度内工期を追及され、守らないと補助金そのものを取り消されるという説明をされる。この状況から早く脱却できるように各方面に訴えたい。工期的にも必要な時間を与え、より良い「もの」を創っていきたいと思う。

 


[愛知支部]-「古民家改修オープンハウス見学会」

  日時:2018年1月7日(日)

  場所:愛知県北名古屋市

  参加者:15名

 

 2018年1月7日(日)愛知県北名古屋市にて、気持ちの良い天気のなか、古民家改修のオープンハウスに参加をしました。参加者は、新建の方(福田、 河合、甫立)を含めて15名程度でした。

 主催は、「家の再生屋」伊藤建設の33歳の社長、伊藤憲(イ トウサトシ)さんです。彼は、 大工育成塾の卒業生で、新建愛知支部の福田さんの教え子です。 今回の物件は、伊藤さんの大学時代に一緒に器械体操をしていたご友人の奥様の実家です。社員も一緒に大工育成塾で技術を磨き、志も同じ方向を向いた、 息のあった若い人と聞いています。現場での苦労は本当にたくさんあったようで、天井や壁を壊してみて、起こしを見て、 直してみて、配管ダクトやシステムバスの天井高さなどとキリがなかったようです。古民家改修は予算を出すのも一苦労と聞きましたが、なんとか無事に完成をしてお披露目となりました。 なるべく既設も建具や天井材を利用するために外して洗い、耐力壁の格子壁を追加してと、若い感性ならではのなかなかの出来栄えとなっていました。 

 その時の話し合いで、1月18日(木)夜に再度集まり、愛知支部で「(仮称)古民家改修勉 強会」を決めて、伊藤君の住まいのある海部郡蟹江町の地元商店街にて、「こんにゃく工場を和食居酒屋へ再生するプロジェ クト」として、新建愛知の仲間で関わっていこうと話ができました。また、支部のなかで古民家再生の案件を相談されている会員と伊藤君を紹介して、2月14日に再度改修をした古民家を見させていただいたようです。 伊藤君は地元商店街の店舗改修をきっかけに、シャッター街になりつつある商店街をなんとかしたい、地元の方とも協力していきたいと、キラキラした目で 語っていました。若い方の前向 きな姿勢に、ベテランの設計者 や大工さんたちも刺激を受けたようです。

(愛知支部・甫立浩一) 


[京都支部]- 実践報告会

  日時:2018年1月27日(土)

  場所:京都建築事務所

  参加者: 9名

 

127日に京都建築事務所で行われた実践報告会は参加者9名と少し寂しかったものの、新建賞を受賞した京都建築事務所の富永さんの「百足屋町388超再生」と、『建まち』誌に連載中の神戸松陰女子学院大学教授の中林さんの「普通の景観学」の読み解き。さらに、去年夏の見学企画で訪れた、むぎ設計工房の吉田さんによる「綾部市里山交流研修センター」の 本と充実した内容でした。

 「百足屋町388超再生」は 新建賞ということもあり、『建まち』誌の2月号に詳しく載っていますが、やはり文章では書きにくい建て替え構想が決まるまでの生々しい物語が実に興味深く、気持ちが引き込まれました。 土地の所有関係の整理が次のステップに進むきっかけとなり、 ここはさすがにうまく報告できないのがなんですが、よくまとまったものだと感心させられます。以前に見学もさせていただいたのですが、とても面白い建物に仕上がっていました。

 「普通の景観学」は『建まち』 誌の白黒版をカラーで見せていただき、その鮮やかな街並みに驚愕となりながらも、普通ってどういったことを指すのか、そこにどんなイメージがあるのか を考えさせられる思慮深い報告でした。伝統的な街並みではない、いわゆるその辺の町のいい感じを見つけるようなアプローチは、いつもの街が違って見えます。『建まち』誌の内容はきっと全国版ホームページでカラーとしてアップされたときに印 象が変わるでしょう。注目です。

 「綾部市里山交流研修センタ ー」は、できた形も興味深いですが、その使われ方を導いたか のようなプレゼンで、その後の管理や増殖する利用方法など、 街の豊かさにつながっていく仕 組みが面白いのではないかと感じます。その場所を使って人のかかわりが豊かになる。建築の本来のあり方ではないかと思い知らされます。イベントの様子や普段の利用の様子が、とても和やかな住まいのようであったり、芝生の広場を囲む学園祭のようであったりと、多種多様に雰囲気を変えていく「変幻自在な場の力」が垣間見えます。

 3者ともに大事なアプローチで新建の奥深さを感じる実践報告でした。

(京都支部・清原正人 )


[福岡支部]ー「建物再生の可能性を探る」

  日時:2018年1月29日(月) 19:00~

  場所:南区高宮 アミカス視聴覚室

  参加:会員17名、会員外16名 計33名

 

福岡支部の2018年の第1回目の例会は、会員の片井氏による昨年のニューヨーク・ヨーロッパ訪問や長崎の軍艦島を見学した際の報告会を開催ました。コンクリートを愛し、建物の再生・改修を通じて安全で快適な生活の持続を目指す元探検部が、好奇心旺盛に世界各地を訪ねました。

 開催日は1月29日に南区高宮のアミカスで、参加者は会員17名で他16名の計33名でした。今回の例会は新建会員以外の方々の参加が多かったような印象があります。 報告は多くのスライドを見ながら、世界各地の歴史ある建物ばかりでなく、東欧にあるザハ・ハディッドなどの設計した最先端の建築の様子など、多岐にわたり興味深いものでした。また長崎の軍艦島の報告では、現在ではなかなか踏み入ることのできない内部の映像も多く見られましたが、全周カメラでのVR体験が上手くいかなかったことが残念でした。

 以下参加者の方の感想です。 今回の海外のお話しも私にとっては初めて見るものがあり、興味深いものでした。また軍艦島の映像は長年にわたる建物の風化が少しは分かりました。小さなこの島で相当な人口の人びとが生活を営んでいたことが幻のように思われました。 (原田) 

 いつもながら、片井さんのフットワークの軽さには驚かされます。アメリカ、ハンガリー、オーストリアときわめて興味深い「建物再生」のレポートでしたが、やはり締めは軍艦島。どこへ行っても、ついついコンクリートのクラックや鉄骨の錆に目が向いてしまうのは片井さんの性(さが)ですね。 (大坪) 

 一般参加の方々からも、多くの美しく珍しい建築を見ることができ、参考になりましたとの感想が多かったです。時代はリニューアル・リノベーションに向かっています。マンション再 生、改修の設計を行いながら、 既存のストックを生かし、安全で持続する暮らしのお手伝いをされている片井さんの報告を存分に楽しむことができました。 

 その後は福岡支部恒例の、お酒もお食事も美味しい充実した懇親会でした。当日の様子や資料などは福岡支部のホームページにも報告を掲載していますので、そちらもご覧ください。

(福岡支部・鹿瀬島隆之)


[北海道支部]- 2017年仕事を語る会

  日時:2017年12月7日(木)

  場所:札幌エルプラザ

  参加者:13名

[北海道支部]- 札幌版次世代住宅の見学会

  日時:2018年2月10日(土)11日

  参加者:約30名

 

 昨年12月7日札幌エルプラザ にて「2017新建仕事を語る会」を開催しました。この企画は会員の仕事紹介と交流をかねたもので、2008年より毎年同時期に行っています。参加者は13名でした。修了後の忘年会は11名でした。 

 2017年の報告は4名です。白田さんはアースチューブ設置による地中熱を利用した新築住宅、これは札幌市が進めている札幌版次世代基準に適合した省エネ住宅です。釧路から参加の柏木さんは、地下室空間を利用した変形敷地での住宅設計について報告、私からは札幌市内での外断熱改修を行った21戸と60戸の事例について紹介しました。 このほか、自治体での老朽化した施設管理の仕事をどのように進めているか紹介がありました。

(北海道支部・大橋周二 )

 

 2月10日、11日の2日間で札幌版次世代住宅の見学会を行いました。札幌市では積雪寒冷地に応じた温暖化対策として、札幌版次世代住宅基準を策定し高断熱・高気密化の普及促進をはかっています。ミニマムからトップランナーまで段階の基準を設け、性能に応じた補助金を交付しています。今回は上から2番目のハイレベルでUA値0.22 W/m²K、一次エネルギー消費量は基準値の63%まで削減しています。

 2日間でご来場いただいたのは予約いただいた方が4組、現在設計中の建築主が2組、過去の建て主が3組、新建会員が4組、その他あわせると30人程度の方が見学されました。 高断熱や第一種換気の説明もしましたが、全室床暖房の暖房方式と換気排熱の融雪システムに高い関心を示していたように思います。当日は最高気温がマイナス5度と極寒の吹雪の中で、 室内の床面はプラス22°C、天井 面は21.5 °Cとほとんど温度差がなく、室温21°Cの快適な環境でした。見学会の案内を掲示したのは北海道住宅新聞社のホームページ上でしたが、2日間で300件以上のアクセスがあったそうです。札幌版次世代住宅のハイレベル基準への関心が高かったのが一因かと考えていま す。

(北海道支部・白田智樹)