2018年5月号(No.474)

公共施設の統廃合政策に抗し、再生・活用を探る

 

市町村合併や公共施設の統廃合が、人々の生活の質を下げ、地域を疲弊させている。本誌でも取り上げた多くの事例がそれを語っている。にもかかわらず、政府は「公共施設等総合管理計画」という名の施設統廃合政策を進めている。大規模にして効率的に使うという時代錯誤の認識にとらわれているとしか思えない。本特集では、この施策の危険性を明らかにするとともに、既存施設の
豊かな再生利用の在り方を示した。そこは、建築家技術者の担うべき領域でもある。

 

 

 

・激震─自治体公共施設の再編・縮小 ~何が求められているのか       安達 智則
・公共施設等総合管理計画で変化する学校と地域              山本 由美
・公的建築ストックを活用して地域拠点をつくる ~ソーネ・おおぞね(愛知県名古屋市)

                                    野田 明宏+丸山 潤+岡田 昭人
・本誌編集委員会 施設建築の転用・再生についての本誌既載の論考
・抄録№280 00年8・9月 スーパーマーケットから市役所へ  ~大分県杵築市役所転用事例  細野 良三
・抄録№364 08年3月    高齢者福祉施設へのコンバージョン ~すこやかの家みたて     渡辺 政利

 

 

 

◆新建のひろば

・災対連──全国と東京の総会報告
・愛知支部──「研究集会in犬山 第1回実行委員会」「女城主の町・岩村町見学」の報告
・千葉支部──「浦安まち歩き&お花見」の報告
・大阪支部──「お花見会」の報告
・復興支援会議ほか支援活動の記録(2018年3月1日~ 3月31日)

 

◆連載
《英国住宅物語15》団地再生の時代  公営住宅団地の危機、団地再生の始動   佐藤 健正

《普通の景観考6》ジョクジャカルタの川沿いのカンポン             中林 浩
《創宇社建築会の時代32》建研連から60年安保へ                佐藤 美弥
《書棚から》夕陽妄語1(せきようもうご)

    

主張『文化財保護法の改正を考える

もえぎ設計/新建全国常任幹事 久永 雅敏

 

 文化財保護法改正案が閣議決定され、改正案の中身について問題点を指摘する声が数多く寄せられています。『建まち』の466号の特集「地域づくりから『観光立国』を問う」と473号(先月号)の特集「文化財行政と地域文化のこれから」を読み、ますます改正案に対する疑問が大きくなってきました。
 改正案の概要はこうです。
・文化財の総合的な活用のための文化財保存活用地域計画を制度化する。
・民間団体による文化財保存活用支援団体を指定する。
・文化財の保存活用計画の認定制度を制度化する。
・文化財保護事務を首長部局への移転を可能にする。
 どう読んでも、文化財保護法の冒頭にある「活用」という文言だけをとらえた改正案に思えます。地域計画を国が認定、あるいは地域計画がなくても個々の文化財の保存活用計画を定め、国から認定を受ければ、届け出だけで活用目的の現状変更が可能になります。民間への委託も気になります。もっとも問題ではないかと感じるのは、文化財保護業務を首長部局に移転できるということです。現在は地方自治体の保護業務は教育委員会が担っていますが、「観光」などを所管する部局が担当できるようになりそうです。文化財活用の円滑化につなげる目的だということです。
 国の成長戦略と地方創生政策に立脚した「観光立国」路線が改正案に大きく反映していることは間違いないと思います。昨年末の内外情勢調査会での安倍総理の講演がそのことをあけすけに語っていて、唖然としました。文化財保護法の改正の理由について、概略こう語ったと報道されています。「お寺でミュージカル、竪穴式住居でお茶会、遺跡のパワースポットでヨガ。アイディア次第で地域の文化や歴史が観光客誘致のキラーコンテンツに生まれ変わります」。2016年に策定された「観光ビジョン実現プログラム」で文化財の観光資源化を打ち出したことと重なります。また、
かつての地方創生担当大臣の学芸員を侮辱した発言も思い出させます。そういえば、私の身近でも京都の伏見稲荷の連続する朱塗りの鳥居が「インスタ映え」するとか、下鴨神社のプロジェクションマッピングが話題になるなど、文化財をもてあそぶ傾向が強くなってきているのではないかと感じます。
 冒頭に紹介した『建まち』の特集記事が文化財の保存活用について重要な示唆を与えてくれています。『建まち』473号の『文化財からの発想』(浦西勉氏)では、文化財の活用に関して、「地域の文化財と地域の人々との結びつきが生まれたとき」その意義が生まれ、「上からではなく」「地域の文化を通して未来のことを考える」という大事な視点が示されています。また、同じく466号の『文化遺産を活かすまちづくり』(上野邦一氏)では、国の国家戦略特区の設定で「岩盤に穴をあける」という方針に対して、文化遺産を守るために「ある地域が持つ規制」は「地域の利益を守るため」の「知恵であり、住民もうけいれてきた」。その規制が『岩盤』となり、地域が守られてきたと指摘しています。
 地方史研究協議会(全国の地方史研究者や研究団体の連絡機関)は、公共財である文化財が「活用」の名のもとに破壊が進むのではないかという危惧や、国から地方自治体への文化財管理の委譲で、現場において文化財保存についての学術的判断の確保が現実的に可能なのかなどの疑問を表明し、国に対して見直しの要望書を提出しています。 文化財を観光客誘致や目先の経済的利益のためだけに「活用」するのではなく、地域の文化と共に住民のやすらぎの場を守り育て、営々と築かれてきたその地域の文化財を受け継ぎ、次の世代に伝え発展させていくことが求められているのではないかと思います。