2018年9月号(No.477)

人間らしく生きる私たちの新しい働き方

 

働き方改革関連法案の成立、後を絶たない過労死・過労自殺、次々に明らかになるセクハラ・パワハラ。いま「働き方」が問題になっている。かつては深夜までの仕事が定常化していた設計・コンサル、3Kといわれた建設現場――こうした建築まちづくりの分野でも改革が叫ばれているが、どこまで進んでいるか。本特集ではILOが掲げる「ディーセント・ワーク」をキーワードに、身近な事例を通して人間らしくやりがいのある働き方を探った。

 

・建築分野で“ディーセント・ワーク”を考える  中島 明子

・建築分野での女性の働き方   小伊藤 亜希子

・建築分野における男性の育児参画  井上 竜太

・私たちのディーセント・ワーク   小野 誠一/大西 智子/川本 真澄

 

◆新建のひろば

・愛知支部──今すぐ役に立つ「手描きパース」勉強会
・埼玉・群馬支部──「合同見学会」
・千葉支部──「仕事を語る会」
・愛知支部──愛知サマーセミナー「建築模型を作ろう」ワークショップに参加をして
・臨海部都民連絡会・オリパラ都民の会主催──「臨海部見学バスツアー」に参加して
・復興支援会議ほか支援活動の記録(2018年7月1日~ 7月31日)

 

◆連載
《英国住宅物語18》持続可能なコミュニティへの取り組-アーバンビレッジ運動とその展開  佐藤 健正
《普通の景観考10》フェルメールの描いたデルフト                    中林 浩

      

 

主張『「民間活用」の先を構想しよう』

住まいの研究所/全国常任幹事 鎌田一夫

 

 いま、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの選手村に関して、東京都の失政が問題になっています。
 これまでのオリンピックの選手村は、前回の東京は国立青少年センター、冬季の札幌は公団住宅、長野は県営住宅と、公的な施設や住宅が仮使用されました。ところが今回は、東京都が提供した土地に大手ディベロッが特定建築者として建設する再開発住宅を使用することにしています。東京都は住宅建設費を負担しなくて済むわけで、まさに民間活用のメリットが生かされているかに見えます。
 しかし、問題は土地の提供、すなわち再開発事業で土地所有者東京都から特定建築者への土地譲渡にあります。土地は面積約13ha、銀座から3㎞の立地です。その土地が129億6千万円、なんと1㎡当たり10万円で譲渡されたのです。これはあまりにも低廉で不当な譲渡だとして、都民が原告となって損害賠償の住民訴訟が起こされました。
 訴訟の原告団が土地鑑定を依頼したところ、最適に利用すれば1610億円の価値ありとの結果が出ました。ひと桁違います。しかし東京都は、選手村使用を前提にした住宅(地)開発なので最適利用の地価では譲渡できないとしています。それ故、1610億円の土地を値引いて129億円で譲渡したというなら、都は選手村のために結局1470億円出費したことになります。
 その対価は、約4000戸の住宅を1年間(準備や撤去を含めて)選手村として確保したということです。戸当たり月300万円の費用です。おかしなことに、ディベロッパーには期間中の賃料は別に払うのです。そして、オリンピック後に東京都には土地も住宅もなにも残りません。民活で住宅建設費ゼロにしたはずの施策の実態はこういうことだったのです。
 この事例ほど極端ではないにしても、民間活用では表向きの行政費用軽減の裏で行政資産がかすめ取られているケースが少なくありません。官と民の協働、行政業務への民間参入はこれからの社会の重要なスキームであり、このような不正、不当のない関係構築が重要です。
 民間活用とはある意味の官民癒着です。民間のノウハウや企画を活かすには、節目ごとに公募や入札で決めるような方法は適していません。選手村の事例では、事業協力者と特定建築者を公募していますが、応募は同一のディベロッパーグループだけです。形式的な公募では公正、正当は保てないのです。
 重要なのは事業過程での情報公開です。そして、それを適切に行うには主体(クライアント)である住民が官民の協議に参加することです。事業の初めには競争によって選定するが、その後の追加や変更は住民も参加した場で協議をして決めていけばいい、イギリスなどにはそうした仕組みがあると聞きます。
 行政とパートナーシップを組む民間にも意識を変えることが求められます。一から条件を整えた事業ではなく、いわば据え膳を食う訳ですから、経費や利益の割合は下げてしかるべきです。
 そしてもっとも重要なことは、直接の事業やサービスを民間が担ったとしても、住民に対する基本的な責任は国や自治体が持つということです。
 選手村の話に戻ります。原告団では、選手村使用という条件付きでも土地代68万円/㎡で事業採算は取れると試算しています。私は、この単価で土地譲渡額を見直し、譲渡額の増収分に見合う再開発住宅(約1600戸)を東京都が取得すべきと提案しています。5700戸の民間マンションだけで成り立つまちよりはバランスのいいミクストコミュニティになり、ディベロッパーもオリンピック後に大量の住宅を捌くリスクが軽減できます。
 再開発計画を変更することで、オリンピック開催に支障をきたすことなくできる施策です。

 

 


[ 愛知支部]ー 今すぐ役に立つ「手描きパース」勉強会

  日時:2018年6月12日(火)  

  場所:サイドビル

  参加:10名(会員6名、会員外4名)

 

  6月12日(火)、18時から21時まで、サイドビルにて手描きパース勉強会を行いました。会員外の方も4名、参加してくれて計10名で行いました。

残念ながら参加予定でしたが当日、来られなかった方も3名ほどいらっしゃいました。講師には、手描きパースを専門にお仕事されている、泉香織さん(いずみ工房代表)を迎えました。7年ほど前にも勉強会を開催していただいています。

 栃木で育った泉さんは、マンガ好きで、高校生の時に、お小遣いで通信パース講座を受けていたそうです。住宅・マンション・土木と多様なパースを描いて来られて、CAD・CGを経験され、公園の設計、パース、イラストも手がけていたそうです。CGと手描きと選択に迷った時期もあったそうですが、現在は手描き一本でと決断されたそうです。印象的だったのは、愛知県蟹江市の、さんぽ道案内図です。まちの良い雰囲気がよく伝わってくる手描きの地図で、こういう地図は味があっていいなあと思いました。

 パースのポイントは「消失点と目の高さ」ということで、実際にグリットを下敷きにトレーシングペーパーへ、屋内パースを描きながら進みました。家具や建具の描き方(高さの決め方)や、そもそもグリットはどう描くのかなどの質問が講義の最中からどんどん出て、とても活気のある勉強会となりました。

 途中休憩、甫立さんが差し入れしてくれた和菓子にてモグモグタイムもありました。

 後半は、平面・立面への影のつけ方や、リノベーションした歴史の趣ある店舗(住生活環境研究所)の実際のパースのできるまでの、作業工程を解説していただきました。大きなボリュームのつかみ方から、だんだんと詳細なパースへと進んでいく工程を、細かく丁寧に説明していただき、とても分かりやすかったです。

 仕事の納期の話では、自分で描いたものを一晩寝かせて、客観的に再度見直して修正をかけるための時間をもらうことや、描き直しのきかない大変さ(これはCGも同じようです)などをお話していただきました。

 終盤には、参加者同士の自己紹介や名刺交換、歓談も生まれ、楽しい勉強会となりました。講師の泉さんは、講義準備から解説まで多くの時間をさいていただき、久しぶりということで少し緊張されていましたが、参加者の方からの質問が多く出たことで、緊張もほぐれていったような気がします。

 今回は、若い会員の方から打ち合わせのなかでスケッチパースを描けるようになりたい、という要望があって行った企画でした。来られなかった方や、その他の方から、今回参加できなかったけど次回参加したいとの要望もあり、さっそく第2弾の開催の希望もでました。参加者の方には感想と、今後の企画希望などアンケートを書いていただきました。

 「楽しく学ぶことができて良かったです。実際にパースを書かれている方の手順をみることができ、参考になりました」「パースの基本的なところを久々に学べてとても参考になりました。実務に生かしていきたいと思います」「コツが少し解った気がします。勉強して行こうと思いました」「これまで感覚的に描いていたものが、ある程度ルールとして学ぶことふができて、勉強になりました。頭を使って考えて、自分の手で描くことはとても大事だと思います」「仕事に役立つことがあれば良いと思い参加しました。サッと手描きパースが描けるようになればと思い参加しました。本日は、ありがとうございました」「当然のことですが、水彩スケッチ

とパース図の大きな違いを実感しました。7年前に教えていただいたのですが、忘れていることが多くて勉強になりました」「今まで打ち合わせのなかで、適当に書いていたパースの基本をもう一度見直して、自分で書いて成長したいと思います。また、連絡をして勉強会をしてもらいたいです」「苦手なパースの基本を学べて良かったです。実務も兼ねての勉強会をできたらと思います」と、さまざまな感想をいただきました。今回の第2弾や今後の企画希望などを踏まえて、支部企画を充実させていきたいと思います。

(愛知支部・黒野晶大)


[埼玉・群馬支部]―「合同見学会」

  日時:2018年6月24日(日)  

  場所:楽山園と周辺の武家屋敷

  参加:10名(会員10名、会員外0名)

 

 毎年恒例の埼玉・群馬支部合同見学会を、6月24日に「楽山園」(群馬県甘楽郡甘楽町)と周辺の武家屋敷にて行いました。

参加者は埼玉支部6名、群馬支部3名、当日飛び入り参加の丸谷博男さん(東京支部)の合計10名でした。楽山園は江戸時代初期に織田信雄によって築造された池泉回遊式の庭園です。近年当時のものを忠実に再現して復元されました。

 特長的なのは、庭園の周囲の山々の景色は当時と変わらない(山に中継アンテナや周辺に電線も見えません)ということです。つまり園内の小高い山の上のあずま屋からは当時の殿様、お姫様が見たのと同じ景色を見られるということです。メインの藩邸は900㎡ほどの規模だったそうですが、復元する代わりに平面表示(地面に間取りを実寸大で区割り)というユニークな方法をとっております。いずれ建物の復元ができれば……との説明がありました。小さな町としてはユニークな方法で、往時をしのばせてくれているなと感心しました。

 園の周辺には当時の小幡藩の武家屋敷の街並みが綺麗な水路に沿って良く保存されており、春の武者行列には沢山の観光客が桜並木の通りを埋め尽くします。

 すでに猛暑の到来を感じる暑さの中の見学、探索でした。昼食をとりながら両支部合同の新建学校の打合せもでき有意義な時間を過ごすことができました。

(群馬支部・新井隆夫)


[千葉支部]―「仕事を語る会」

  日時:2018年6月30日(土)  

  場所:館山市古民家ゴンジロー

  参加:17名(会員10名、会員外5名)

 

 千葉支部恒例の「仕事を語る会」が6月30日、館山市古民家ゴンジローにて開催されました。

支部会員参加者は岡部先生含めて10名と少なかったのですが、神奈川支部の小野さん、千葉大の留学生2名(イタリアとアフリカ某国)、加瀬澤知人の医療教育者、長房さんの仕事仲間2人、東京大学岡部研究室の学生など多彩な顔触れが集まりました。

  岡部研究室中西芳樹さんの「古民家研究」を冒頭に会員8名が報告しました。以下にテーマのみ紹介。「木造築72年の修善とリノベーション」「伊勢『おはらい町』と『おかげ横丁』の街興し」「面開発市街地住宅団地の変遷」「狭小住宅の多様な暮らし方の可能性を求めて(老後の生活対応と住み継がれる住まい)」「応急仮設住宅コンペ/戦後長屋のリフォーム2題」「茅葺古民家『ろくすけ』2008~2017改修報告」「こなか保育園建設の報告」「古民家再生様々な事情」と、多彩なテーマです。 なかでも町場に生きる設計者の奮闘ぶりが感じられるテーマは学生たちの心を打ったようです。こんな話を聞く機会はなかったという感想が何人もの学生から聞かれました。報告に時間がとられ、議論をする余裕はほとんどありませんでしたが、世界中から集まっている学生の感想をしっかり聞いてあげるということでもよいかなと思いました。

 会員外の参加者の感想も上々でした。新建の雰囲気を気に入ってくれたのか、長房さんの仕事仲間二人が新建入会を表明しました(その後正式入会)。宿泊先の夜の懇親会から参加した岡部研卒業生で、館山市内で設計事務所を営む岸田さんも入会してくれました。久方ぶりの大成果です。

(千葉支部・加瀬澤文芳)


[愛知支部]ー 愛知サマーセミナー

     「建築模型を作ろう」ワークショップに参加をして

  日時:2018年7月15日(日)  

  場所:椙山女学園

  参加:一般参加14名

7月の三連休の15日(日)に第30回愛知サマーセミナーに参加をしてきました。毎年参加をしていますが、今回は、千種区の2会場で、私たちは、椙山女学園の教室での講座開催でした。

一般の方の参加者は、小学生・中学生・高校生・大学生の14名でした。講座前の教室に一番乗りで参加をしてくれた小学生の親子の方も限定10名の言葉に早目に来てくれていたようです。

 主講師を務めた黒野君が丁寧な模型の作り方を解説して、模型つくりのコツを分かりやすく伝えてくれました。ただ、授業を受けるだけではなく、模型作りの講座なので、2コマ通しの約4時間の時間も、黙々と製作に向かう受講者の熱心さで、あっという間でした。

 見本となる建物は、結構複雑な形をしていて、切り取るパーツの数も多かったのですが、作業中は、愛知支部のメンバーが受講者にアドバイスをして、全員見事に完成しました。建物完成後は、庭木や塀を作り、表札やポストまで作っている方もいました。

 今年のテーマは「模型作り」でした。テーマに興味を高く持った方は早くから会場に来られました。限定10名の講座でしたので、急遽、資料を増し刷りし、予備に準備をしていた材料を使い対応をしましたが、反響の大きさに驚きました。参加者の感想でも、「建築士さんが、どういうふうに家を設計しているのか分かった」「建築やインテリア関係の仕事に興味があるので、良い経験になった」「将来の夢は、建築家になることなので、この経験を生かしたい」と嬉しい感想がたくさんありました。また、来年も企画を考え、参加をして、新しい出会いを楽しみにしている愛知支部でした。

(愛知支部・甫立浩一)


[臨海部都民連絡会・オリパラ都民の会主催]

        ー 「臨海部見学バスツアー」に参加して

  日時:2018年7月29日(日)  

  場所:東京臨海部

  参加:名(会員名、会員外名)

 2020年7月開幕の第32回オリンピックまであと2年、東京臨海部では競技会場、選手村などの建設工事が本格化しています。

オリンピックの簡素化を掲げるIOCの意向に反してオリンピック競技施設建設と道路新設工事等を含めた関連経費は4兆円以上ともいわれています。私は「この施設建設に不要不急、無駄はないのか、臨海部を大手開発業者やゼネコンの儲けの場に提供しているのではないか」の疑念から、7月29日に行われた標記のバスツアーに参加しました。バスツアーは臨海部開発問題を考える都民連絡会と2020オリンピック・パラリンピックを考える都民の会の共催で、バスの補助席一杯の53名が参加しました。熱中症が心配される強い日差しの下にも関わ

らず、晴海オリンピック村建設現場、豊洲新市場、お台場海浜公園、青海客船埠頭、海の森水上競技場、辰巳国際水泳場、アクアティクスセンターなど、まる1日かけて17か所を見学する精力的な行程でした。

 晴海オリンピック選手村では都が540億円かけて整備した13haの敷地に選手の宿泊施設21棟を建てる計画で、うち15棟で躯体、残りは基礎工事中でした。臨海都民連の関口さんは「東京都はこの都民の財産を大手不動産会社11社に1㎡当たり10万円で譲渡した。オリンピック後は5950戸のマンションとして売却し大儲けする。私たちは都有地の投げ売りで大損させられたので、小池都知事は11社に1200億円支払うよう請求せよと住民訴訟を起こしている」と発言。鎌田一夫氏(新建千葉支部)は「東京都は土地譲渡価格を見直し、譲渡価格に見合う約3分の1位の住宅を買い取って都営住宅とする」提案をしていますが、これが現実味を帯びてきています。

 10月11日の開場を待つ豊洲新市場は野菜棟、鮮魚棟が道路に分断されて160倍ものベンゼン汚染の上にひっそりと建っていました。

 臨海都民連の矢野さんは「都は土壌汚染をきれいにするとの都民との約束を破って強行開場する。ベンゼンが基準の160倍出ていて、地下水位も下がらない危険な市場で野菜、魚を取り扱う。水産仲卸業者の店はウナギの寝床で幅1・5m、マグロがさばけない、市場レイアウトの悪さ、運搬ターレの動線など開場したら大混乱になる」と説明。

 青海大型クルーズ客船埠頭整備工事は中央防波堤外側コンテナふ頭に建設が進んでいました。臨海都民連は「オリンピックを名目の大型クルーズ客船バース整備に380億円かけて建設する。これでは横浜港との客船の奪い合いになる。コンテナ船も大形クルーズ船も東京港に新たな埠頭はいらない。不要不急工事の最たるものだ」と批判。

 さらにバスツアーは、有明アリーナ(バレーボール、357億円)、有明テニスの森再整備(110億円)、お台場海浜公園(トライアスロン)、潮風公園(ビーチバレー)、海の森水上競技場(ボート競技、308億円)、海の森クロスカントリー(総合馬術)、夢の島公園(アーチェリー、14億円)などを巡りました。人気の夢の島公園は42年間育て上げた豊かな緑がオリンピック名目で壊されていました。トライアスロン競技場のお台場は今でも水泳禁止、大腸菌がウヨウヨいる海水を浄化できるのでしょうか。競泳、水球の競技場アクアティクスセンターは、

メインアリーナの地上で組み立てた屋根を4本のコアー柱を利用して15 mリフトアップする工事を行っていました。総工費567億円、7万7700㎡、客席1万5000席、内仮設席は5000席、当初の2万席を批判され削減したものです。400m離れた場所に都営の辰巳国際水泳場(81億円)があり、「オリンピック後経営が成り立たず辰巳は閉鎖されるのでは」と懸念されています。

 小池都知事が唱える国際金融都市東京を目指して超高層ビルが林立する再開発、住環境破壊の幹線道路建設が急ピッチで進んでいます。臨海部開発はオリンピック施設建設を突破口に、五輪後には晴海選手村跡地のマンション建設など臨海部を超高層が林立する国際金融都市の心臓部にしたいのでしょうか。私は中小建設業の立場から検証ツアーに参加して、臨海開発が都民の住環境を破壊し、巨大開発がバブル崩壊する危機、建設労働者を独占し中小建設業を崩壊させる危機を強く感じました。

(新協建設工業株式会社・星野輝夫)