2019年5月号(No.485)

観光立国とはなにか

 

 

街なかでも観光地でも、外国人を見掛ける ことが本当に多くなった。統計数字を見な くてもインバウンドの急増は実感出来る。 その背景には日本の相対的な経済力の低下 があるといわれるが、そこを逆手にとって 政府は観光を成長産業に育てようと躍起で ある。しかし、オーバーツーリズムの影響は 各地に出始めており、地域の居住環境を崩 しはじめている。もともと、観光は訪れる側 にも迎える側にも日常を超えた魅力に溢れ ている。様々な視点からの論考で、本来の観 光の姿をどう取り戻すかを共に考えたい。 

 

・観光立国の虚実                     堀田 祐三子

・観光礼賛 ── 貧しい観光からの脱却を歴史に学ぶ       中林 浩

・京都市における「民泊問題」                 藤井 豊

・観光地そして住宅地でもある鎌倉                大西 智子

・奈良町でいま感じること                    渡邊 有佳子

・安倍政権の観光立国と一体化する京都              池田 豊

 

◆新建のひろば

千葉支部 - ちば塾 15 「東日本大震災、 7 月豪雨被災地の 現状報告」

・「ジャーナリストから見た晴海土地投げ売り疑惑」 シンポジウム報告

・『神奈川支部-まちづくりの主人公は誰か ? 新企画Session-SK 』

・東京支部-連続講座:「20 世紀の建築空間遺産」の PartⅡを継続実施

 

◆連載

《災害復興の姿 4》ジャワ島の ドームハウス       塩崎 賢明

《書棚から》地味のあるデザイン

《新日本再生紀行17》山口県宇部市(上)         藤本 昌也

 

主張  『省エネ法改正にどう向き合うか ──ドイツ視察で考えたこと』

(有)大橋建築設計室/新建全国常任幹事 大橋周二

 

 今年 1 月、ドイツの外断熱建物視察を目的にミ ュンヘン、ベルリンの 2 都市を見学してきました。  ミュンヘンでは、ホルツキルヘンにあるフラン ホーファー建築物理研究所を訪ね、ミュンヘン市 内で 2 年に一度開催されている大規模な建築建材 展「BAUメッセ」では、高断熱・高気密仕様の施工に欠かせない建築資材の情報を得ました。ま た、高断熱高気密仕様の住宅展示場も見学し、そ の工法と室内環境も体感することができました。  ベルリンでは、中央駅から南へ 30 分ほどにある ポツダム市のガーデンシティ・ドリューイッツで、 既存建物の省エネ改修、暖房エルギーの消費削減 対策、太陽熱温水器の利用や太陽光発電による創エネの取り組みなどの紹介を受けました。  ドイツでは、1973年のオイルショック後「断熱政令」「暖房・給湯設備政令」が定められ、 2002年にはこの 2 つの政令が統合されて「省エネ政令」に発展しています。2008年 7 月に は「、エネルギーパス表示」と言われる「家の燃費」 性能表示制度がつくられ、住宅の賃貸・売買取引 時にはこの性能表示の提示も義務化されています。  現在は2010年のEU指令を受けて、新築・ 大改修の建物のエネルギー消費量をほぼゼロにす る取り組みが進められており、公共建築物の「ゼ ロエネルギー化」と公共以外の建築物にも省エネ 化の義務を求める「建物エネルギー法」の検討が進んでいます。

 日本では2015年「建築物のエネルギー消費 性能の向上に関する法律」が成立しました。  2020年に向け、小規模住宅への省エネ義務 化も検討されていましたが、今年 1 月現在では「住 宅の省エネ基準適合義務化は見送りの公算」という見通しが報じられ、小規模住宅については、建 築士が建築主へ説明を行う「説明義務」を嫁す方 向のようです。高断熱・高気密仕様、パッシブハウス作りを目指す建築団体からは、世界に遅れる日本の省エネ基準、周回遅れ……など厳しい意見が相次いでいます。  この間の改正省エネ法改正では、①省エネ基準 地域区分を全国 6 地域から 8 地域に見直す②建物 の断熱性能について総熱損失を床面積当たりで評 価する方式(Q値)から建物外皮性能を外皮面積 で評価する(UA値)方式に変更③さらに、建物 が消費する一次エネルギー消費基準を定め、この 評価については「独立行政法人建築研究所」が Web上で公開している「一次エネルギー算定プ ログラム」を使用して評価する方式になりました。  小規模な住宅への基準適合化義務の見送りの背景に、建築主には工事費などの負担増、設計者・ 施工者が省エネ基準について理解が習熟していな い、さらには審査体制の問題も上げられています。 しかし、2015年に改正された内容にもとづく 運用は、ZEH*補助金制度の利用や、私の住む札幌市での高性能住宅仕様への補助制度を利用する際のベースになっており、実務面ではすでに実 施されているのが現状です。  一方で、昨年福井県越前市でZEH補助金を利用する住宅設計に関わり、この申請業務を行っていますが、上記③のWeb上で公開されている算 定プログラムの算定根拠は多くの設計者には分か り難くいとの批判の声もあります。たしかに、補 助金のために補助金以上の費用を使って設備機器 の導入をせざる得ない状況には疑問を感じます  前述の通り、ドイツでは国策として建物のゼロ エネギー化を進めるプロジェクトが進み、北米で もパッシブハウス造りが推進されています。  新建第 31 回大会(2017年)では、「住宅等 建築物の省エネは地球環境への影響の問題を含めて建築技術者の取り組むべき大切な課題」と位置づけています。私は、地域に根ざし、その特性を考慮した建築活動を進めている新建会員が、この省エネ施策について関心を持ち、全国的な交流を行う必要があると考えています。

 

*ZEH〈ゼッチ〉とはネット・ゼロ・エネルギーハウ スの略で、外皮性能の向上や高効率設備機器の導入で 大幅な省エネを実現した住宅


千葉支部 - ちば塾 15 「東日本大震災、 7 月豪雨被災地の 現状報告」

  日時:2019年3月1日(金)  

  場所:アトリエ結(鈴木進さんの事務所)

 

3月 1日・金、講師を含め 8 名の参加でアトリエ結にて行われました。報告者は順に鈴木氏、 泉氏、鎌田氏が担当。それぞれ の報告の概略は以下の通りです。

 昨年 11 月末に、大学研究室の同窓会に合わせて、 6 人で宮城県から岩手県にかけて東日本大震災の被災地を訪れ、震災直後 に行った時との変化を報告。女川は、すっかり様変わりし、土地が嵩上げされ新たな区画割が 形成されているが、空き地が目 立つ。シーバルピア女川は、まちなか再生計画によって整備(第1 号とのこと)された海に面した商店街。皆の共通の話題はこ の商店街が活気を持ち続けてほ しいが、日常的な利用ではオー プンスペースが広すぎないか、 もう少しコンパクトにして賑やかさを醸し出す工夫をしても良かったのではないか、店の名前が横文字のところが多く若い人向けの雰囲気を感じるが、地元 の方たちはどのように思っているだろうか、などの感想があり ました。

  大川小学校校庭の裏には急斜面があり、津波の到達した位置が示されており、この斜面を登 って助かった小学生や教師もいたようです。なぜ悲惨な状況になったのか、いざ自分がその場 にいたらなにをしたかなど、次 々と想いが生じます。しかし、 過去の経験がまったく活かされてないのは、教育や防災に関わる行政機関の責任は大きいものと強く思いました。 高台移転集落では明治の津波 の後に高台移転した旧大谷村と 旧階上村を訪問。 3 ・ 11 では、 人的にも、物的にも大きな被害 は生じなかったようです。今回 の復興の状況を見て、これまで何度も津波被害にあっている経験を検証し、もっと復興に生かせないのか、疑問を持ちました。  大槌町ではご自身も被災され たボランティアの方に案内してもらいました。市内の復旧は進んでいるようですが、空き地が 目立ちました。市街地のはずれの高台にあった寺に多くの方が 避難した後に津波が襲い、ここで亡くなった方も多かったとのことです。被災後は防潮堤が無 残に破壊されていましたが、今 回は海岸線に沿っていたる所に設置された防潮堤が目に付きま した。

  今回、海岸線に沿って延々と続く防潮堤を各地で見てきまし たが、実際に防潮堤工事を前にすると、感覚的には必要以上の長さ、巨大さのように思う一方で、津波被災地や福島原発での津波の高さを考えると本当にこの防潮堤が安全なのか疑問を持ちました。また、巨大な防潮堤により、海と関わって営まれてきた暮らしや美しい風景が分断され、失われてしまったように感じました。

 (千葉支部・鈴木進)

 

  広島では、昨年の 7 月豪雨で被害の大きかった広島市東部小屋浦地区と倉敷西北部吉備真備地区以外にも、 5 年前に市北部 の安佐南などで大規模な土砂災害が起こっている。中国地方は花崗岩が風化した真砂土質の地肌が多く、山の岩肌を擦れば、 砂状に崩れることでわかる。そ して岩肌のなかの亀裂に水は容易に浸み込んでいき、崩落を招 く。  現在の都市計画法が施行される前、市街化区域の線引きをど う引くかということが問題だった(大学の研究室で広島県・市 からの委託で線引きの基礎作業 を行っていた)。広島は河川敷の町だが、平地が少なく山が迫 っている。そこで山斜面のどこまでを住宅地として容認するかが問題だったが、市は政令指定都市を目指して人口を増やしたがっていたから、できるだけ広げたがっていた。  土砂崩れの災害をまったく予想できなかった自然災害とみる無理な住宅地化だったのか、軽 々には判断できないが、 50 万人 ほどだった人口は、 20 年経った昭和 60 年に倍増し100万都市 となった。町村合併の効果が大 きいが、一方で、無理な、とい うことは災害危険への対応が忘れられたままの状態で、突っ走 ってしまったのではないか?と 思ったりする。今回の災害で、 山の斜面地の住宅地に対して、 上部に砂防ダムを造る必要があ る、とか議論されているようだ が、どれだけの効果があるのかは疑問視する意見もある。

(同・泉宏佳)

 

 東日本大震災の国の復興予算 は最終的に(2020年まで)32 兆円といわれているが、大半 はハードな復興事業に使われ、 ①防潮堤などの津波防護②高台移転や高盛土によるまちの再生 ③復興住宅の建設が主で、以前 から有効性の疑問や無駄な支出 が指摘されている。昨年 10 月に、 新建の北海道・東北ブロック会議の際に石巻市を見て回る機会 があったので、より明らかになった無駄や矛盾の姿を報告します。今度の大震災ではTVでリアルタイムに被災状況が映し出さ れ、防潮堤を越えた津波が家や自動車を押し流すが、嵩盛土の高速道路で止まった時にはホッ とし、陸側にもうひとつの堤 ( 2 線堤)があると有効だと、 多くの人が感じたと思います。 防災復興においても、平坦な沿 岸部では二重堤防が基本です。 港や水産加工所があって巨大な防波堤は造れない石巻市も津波対策は二重堤防で、二重の堤防 の間は居住禁止、内側は安全という位置づけがされました。  しかし、平坦部が狭い石巻市 東部の渡波近くではふたつの堤防の間の距離がなく、二重堤防 の効果は期待できませんが、その内側は安全ということで復興 事業の対象外(白地地区)とし ており、実効果のない 2 線堤を 形式的に造る費用をもっと有効 に使えなかったのか。  石巻でも、リアス式海岸の続 く牡鹿半島部は高台移転が基本ですが、水産加工などの業務地は堤防で守ります。中心市街地がほぼ全滅した雄勝地区も、奥の深い湾に沿って巨大な堤防が延々と築かれているが、業務施設の再建が予定される中心部を除けば、山が迫っていて堤防の 内側は道路が 1 本通っているだけです。地元の人は「水が引けば道路は使えた。巨大堤防で守 る必要はない」。平成の大合併 で石巻市に編入した旧雄勝町の復興計画はしっかり練られた様に見えません。  港や漁業施設を抱える女川町 は堤防を築かず、居住地は高台移転が基本で、周辺の山は切り開かれて住宅地が造成されています。盛土されている居住禁止 区域は夜に人のいない商店街などです。このふたつのエリアが一体のまちになるか、女川復興の大きな課題です。

(同・鎌田一夫)

 

 鈴木さんの東北震災後の現在の様子を聞き、私も昨年秋口に岩手県の海岸沿いにある震災遺構「田老観光ホテル」を見て、 岩手、宮城、福島県の三陸海岸 約300㎞を車で南下し、津波被害のあった海岸線の街の様子を思い出した。  印象に残ったのは、「ここから過去の津波浸水区域」と書かれた津波浸水区域看板とそれに続くコンクリートの大きな堤防です。高台の道路を車で走って いると景色の良いリアス式海岸 が見える。次に、道路脇に立つ津波浸水区域看板を過ぎて下る と大きなコンクリート堤防が現 れ、海が見えなくなる。このリズムの繰り返しを見ているうちに、自然・海・山・場所・人間・ 生活・死・時間・歴史・記憶などの言葉が私の脳に浮かぶ。現 在も工事が進行している。  私の目的は、田老観光ホテル、 大川小学校、閖上地区の震災遺構を自分の目で確認し、現在進行している計画の参考にするためです。東京湾に面した千葉県 富津岬に計画している福祉施設 の敷地が、千葉県作成のハザー ドマップ上で最大津波浸水区域8 〜 10 mの近くに位置しているため、周囲に高台のないこの地 域の人々や施設の関係者が災害時に、屋外階段を上り 20 m以上の屋上に安全に避難できる津波 避難広場を持つ津波避難ビルを計画している。津波避難ビルの設計基準は整備されていないが、 なにかないかとインターネットで検索したら「津波避難ビルの構造設計法」BRI-H 23 講習 会テキストがあり、これを参考に建築に与える津波の力と津波 に耐える必要な構造と、実現するためのコストなどの検討を現 在しているところです。  田老観光ホテルでは、 3 階ま での外壁は津波で流され鉄骨の柱が残り、 4 階の床版が津波の力で上に持ち上げられたと聞い た。大川小学校はRC造の津波 による被害の様子がよくわかる。 閖上地区は以前JIAで応急危 険度判定のボランテイアとして亘理町に行ったときに見たが、 かなり復興が進んでいる。  私が担当している富津の計画 は、津波災害に対して周囲に高い避難場所がないこの地域の人々の命を救うために役立つ施設であり、設計者としてできるだ けのことをしたいと考え震災遺 構の視察をした。今晩の三人の講演は大変参考になりました。 有難うございました。 

(同・宇野武夫)


「ジャーナリストから見た晴海土地投げ売り疑惑」 シンポジウム報告

  日時:2019年3月5日(火)  

  場所:江東区総合区民センター

 

 2020オリンピック、パラ リンピックにむけて東京臨海部 の晴海ふ頭では選手村建設が進 んでいます。オリンピック選手村整備を理由にした晴海大規模 再開発は都民の財産、都有地が時価相場の 1 割で大手不動産 11 社に投げ売りされました。都民の損害額は1200億円、都民33 名が原告として小池都知事に激安譲渡価格の是正を求め、住民訴訟、裁判が争われています。

  3 月 5 日、江東区総合区民セ ンターで「晴海選手村土地投げ売り正す会」主催、 4 人のジャ ーナリストによる「晴海選手村土地投げ売り疑惑」シンポジウムが開かれました。 4 人のパネラーは日刊ゲンダイの今泉恵孝 氏、週刊金曜日の片岡信行氏、 しんぶん赤旗の岡部祐三氏、週刊東洋経済の西沢祐介氏で、私は初めてジャーナリストの報道、 見解に触れることができました。

  「バーゲン価格の積算根拠、 オール黒塗り、1200億円の大損害」との日刊ゲンダイの紙 面を示した今泉記者は「メディア各社は不動産会社の広告出稿量、新聞テレビ局の不動産会社化により 11 社のディベロッパーとの密接交渉、圧力があったのでは」と述べました。週刊金曜日の片岡記者は「地方自治法すり抜け大手 11 社に激安譲渡、議会、審議会に諮らず出来レース公募」とすっぱ抜きました。しんぶん赤旗の岡部記者は「 9 割引き、都が当初から建設コンサル使い検討、開発企業のもうけを優先」と証拠文書でからくりを暴露し、赤旗紙面では正す会 の活動を含め 10 数回の報道を続けています。週刊東洋経済の西沢記者は「専門家の予想価格は周辺相場の 1 〜 2 割安、土地代タダ取りのからくり、首都圏の相場を狂わせる4100戸の割 り安分譲」と東洋経済で報道しました。ジャーナリストによる 各紙・誌の報道は多くの都民の知るところとなり、森友の 15 倍 もの都民財産の損失に怒りの声 が上がり、正す会への参加・協力を生み出すことでしょう。 

  大手マスコミの圧力に屈せず、 都民、国民にこの大がかりな不正行為の事実を広げていきましょう。

(土地投げ売り正す会会員・星野輝夫)


『神奈川支部-まちづくりの主人公は誰か ? 新企画Session-SK 』

  日時:2019年3月12日(火)  

  場所:鳥どり(横浜西口店)

 

Session-SKは 2019年 3 月 12 日に第 1 回を 開催。鳥どり(横浜西口店)に て 20 : 00 〜 22 : 00 の時間帯で行 いました。参加者は合計 13 名(神 奈川支部 8 名、東京支部 4 名、 会員外 1 名)。今回のゲストは 神奈川支部の若手会員(施工者) の方をお呼びしました。年 4 回 の開催を予定しており、神奈川 県内にて次回 7 月の開催を予定 しています。

 

 〝まち〞を使うのは誰か?  本誌のタイトルである『建築とまちづくり』。この〝まちづくり〞という分野を考える時にいつも頭をよぎることがあります。「〝まちづくり〞の〝まち〞。 この〝まち〞の主人公は誰か?」 と。私のなかでの答えは「まち に暮らす人、そして生き物。全員」です。ひどく当たり前のことといえばそうですが。〝まちづくり〞のことを考え、そして進める時に私たちは〝全員〞のことを考えられているのでしょ うか。  現代はさまざまな情報をネッ トやテレビで簡単に入手できるようになりました。しかし、その情報の多くは一般論でしかありません。たとえば、外国人労働者の方々が日本の法律のもと で、どういった暮らしを強いられているのかをネットやニュー スで知ることはできます。しかし、あなたの〝まち〞に暮らす身近な外国人労働者は実際に何を考え何に困っているのかということは、ネットやテレビなどの情報から知ることは非常に難 しいことです。〝個人の尊重〞から始まる、〝まちづくり〞

  「では、私たちの〝まち〞に暮らす人々のリアルな実態を知 るにはどうしたら良いのか?」そんな、疑問から生まれたのが 今回の企画『Session-SK』です。この企画は毎回 1 人のゲストをお招きして、ゲス トが気になるトピックにまつわる話を参加者みんなで徹底的に 聞いて話し合うという、シンプルなものです。司会進行役はいますが、セミナーのような堅い 雰囲気ではなくお酒を飲みなが ら楽しくやっています。トピックは建築分野に関わらずさまざまな気になることを取り上げま す。ゲストが日常で、心配していること、楽しんでいること、 悩んでいることなら、なんでも OKとしています。  この企画の肝はゲスト個人に徹底的にフォーカスすることで す。話の腰を折って一般論に当てはめるのではなく、個人がなにを考え、なにを感じているのかを徹底的に聞く。個人を尊重することです。個人を大切にすることで始めて、その人が直面 している現実をリアルなものと して実感することができます。 その上で自分が直面している問題と照らし合わせてみると、思 いがけない気づき(〝まち〞の問題発見)につながります。〝仕事のやりがい、とは?〞  たとえば、第 1 回のS e s s ion-SKでは、ゲストが考 える「仕事のやりがい」に触れる場面がありました。「時間的な終わりがあるからといって、 与えられたことをやるだけでな く。それ以上のことを自分が考えてやれる時。もちろん失敗することもあるけれど。改善できることを考えて、これ次にもっと良くできるなという部分を見つける時に仕事のやりがいを感 じられる」というこの内容は、 参加者の心にさまざまな波紋を広げました。「法制化やマニュアル化で仕事から自由度がどんどん奪われている現状「」SNS の炎上などに見る、失敗を許さない今の社会の現状」「改善すべきことは分かっていても職場 の環境として上手くできない現状」など、参加者が日々感じて いる〝やりがい〞にまつわる悩 みが色々と出てきて、話し合われました。〝さまざまな角度から、まちをとらえる〞  一般的に〝まちづくり〞を考 える観点は「医療、福祉、教育、住居、交通……」といった項目になりがちです。しかし、「人 生の楽しみ・やりがい」という 観点で〝まち〞を考えてみると いう視野を、今回のSess ion-SKは与えてくれまし た。「より自由な発想で働ける 〝まち〞とは?」「仕事で失敗を許容してくれる〝まち〞とは?」 「そもそも仕事でやりがいを得 にくい人がいる。ならば〝、まち〞 でやりがいを得られる機会は作れないのか?」などなど、一般論ではないリアルで身近な問題 から始まる〝まちづくり〞を考えることができるのではないで しょうか。 

 Session-SKは 2019年 3 月 12 日に第 1 回を 開催。鳥どり(横浜西口店)に て 20 : 00 〜 22 : 00 の時間帯で行 いました。参加者は合計 13 名(神 奈川支部 8 名、東京支部 4 名、 会員外 1 名)。今回のゲストは 神奈川支部の若手会員(施工者) の方をお呼びしました。年 4 回 の開催を予定しており、神奈川 県内にて次回 7 月の開催を予定 しています。

ご興味がある方は 運営事務局 : 椎木までご連絡ください。( s e s s i o n s k . j i m @g m a i l . c o m )

 (神奈川支部・椎木祐介)


東京支部 - 連続講座:「20 世紀の建築空間遺産」の PartⅡを継続実施

  日時:第一回2019年3月14日(木)  ・第二回2019年4月11日(木)

  場所:「都市まち研」会議室

 

この連続講座は、本誌『建ま ち』に、2015年 9 月号から 2017年 10 月号まで足掛け 3 年にわたり24 回掲載された「 20 世紀の建築空間遺産」をもとに、 執筆者の小林良雄さんを講師に月一回、全 10 回に組み、東京支部が実施しました。毎月第 2 水曜日の夜 7 時から 9 時までの 2時間、会場は神田の「都市まち研」の会議室をお借りしました。  第 1 回は2018年 2 月で、8 月だけ夏休みとし、 9 月に再開し 12 月までの十回、参加者は毎回 20 数名あり、のべ240名を超えました。全回、半数近く が非会員の参加で、好評のうちに終了しました。

 

 講座内容は連載での題名の通 り、 20 世紀を代表し、その後の建築の空間構成に大きな影響を 与えたと思われる建築のなかか ら「同じ建築家からは 2 つまで、 また行き止まりの傑作は取り上げない」という方針で 26 点を選 び、最後の 2 号を除き、毎号一 建築に照準を当て論考したものでしたが、この講座では、連載 の内、日本の建築 2 点を除く 24 点を各回関連テーマのある 2 点 以上で組み、限られた誌面では伝えきれなかった内容を豊富な写真と図版のスライド投映を駆使して話されました。講座の始めにはグーグルアースを使い、 その建築の位置と環境を地球規模から俯瞰するという、臨場感 あふれる試みも行いました。  図版は、配置図や平面図、断面図はもとより、アイソメ図を 加えるなどして、その建築の空間構成の特徴を分かりやすく説明し、写真では内、外部空間の 特質、空間を構成する仕上げ材料や光の状況、さらには設備や家具などにも話がおよび、実際に見学に行かれた時のこと、その建築にまつわる話、最後にあ らためてそその建築の特徴と特質をまとめて話されました。写真については会員・非会員の方 からも多く提供していただき、 作品集には掲載されていない裏回りなども紹介され、その建築全体を理解できるものになりま した。  講座の後半には、小林さん以外に実際に見に行かれた参加者 の方々から、その時の印象や意見など貴重な話をうかがうこと ができ、楽しい会になりました。 

  最終回の 12 月には講座終了後、 会場にて懇親会を行い、 21 名の参加があり、本講座へのご意見や感想をうかがいました。「以前東京支部の『ホワイエ』で小林さんが連載した「フランス冬の旅」でル・トロネの修道院について書かれたのを読んで、この連続講座に参加しようと思いました」「今までの同様な講座と比較して話が大変分かりやすかった」「必ずプランと断面図 を提示されたのはよかった」などのご意見をいただきました。 また、先述した選択方針の制約をはずし「、F・L・ライトの『落水荘』やコルビュジェの『ロンシャンの礼拝堂』などをぜひ取 り上げてほしい」との要望が多 く寄せられました。  そこで『建まち』連載と講座ではあえて取り上げなかった優 れた建築と日本の建築の代表を加えて構成したPartⅡを、補講として行うことになりました。

  PartⅡは今年の 3月から7月までの全 5 回で、会場は同 じ「都市まち研」会議室です。 現在まで、第 1 回、 3 月 14 日「落 水荘」、第 2 回、 4 月 11日「ロ ンシャンの礼拝堂」を行いまし た。前回同様の参加者数で好評です。PartⅡでは一講座一建築なので、より深くその建築 を知ることができる内容となっ ています。  今までの全講座は音声を含め ビデオ撮影されていますが、会 員でない参加者からは「ぜひ、 話の全部を文章化してほしい」 との要望が寄せられています。以下に今後の講座の紹介をしますので、お出かけください。

 

 「 20 世紀の建築空間遺産」 PartⅡ、今後の予定

●第 3 回  5 月 8 日(水) 想と祈りの空間を結ぶ迷路的回廊 ラ・ツーレットの修道院   1960年  L・コルビュジ ェ

●第 4 回  6 月 13 日(木) 痛みの空間 ユダヤ博物館   2001年  D・リベスキンド

●第 5 回  7月 11 日(木) 日本の 20 世紀後半を代表する 建築空間 東京文化会館   1961年   前川國男建築設計事務所

                                       国立代々木競技場   1964 年   丹下健三+ウルテック

                                       国立歴史民俗博物館   1983年   芦原建築設計研 究所

  なお講座の基になった連載は東京支部のWebホーム頁に掲載されていますので随時、ご覧 いただけます。

(東京支部・柳澤泰博)