2019年11月号(No.490)

日本の縮図/千葉 ─ 隣り合う様々な地域と生業

 

 千葉県は府県別の統計などでは上位を占めることが多く、比較的豊かだが、特徴のない県というのが一般的な認識である。しかし合計値では消えてしまうが、東京都市圏の一部を成すエリア、少子高齢化が進む農漁村部、その中間的な地域などが、半島という閉鎖的な空間に併存する様は日本の縮図ともいえる。都市開発の系譜と現状、古い町の再整備、各地での建築まちづくりの動向などから、千葉の変貌と今日を捉えてみた。そこに、現代社会のどんな側面が浮かび上がるか。

 

 

・千葉県から見えてくるもの                     岡部 明子×中島 明子

・千葉県の開発史と現状および再開発・再整備の動向          泉 宏佳

・重要伝統的建造物群保存地区 商家町 佐原のまちづくり       髙山 登

・《ルポルタージュ》浦安の元町再整備 ──  堀江・猫実中央地区    大和 稔

・「住まいと福祉の会」の活動

  ─ 高齢者・障がいのある方々が安心して、安全に住み続けるために  鈴木 進

・サンブスギで地産地消のすまいづくり                稗田 忠弘

・魅力的な南房総・館山での取り組み                 岸田 一輝

・台風15号による千葉県内の被害について               鈴木 進

 

◆新建のひろば

・第51回全国保育団体合同研究集会

・西日本ブロック会議報告 「豪雨災害と住まいの復興」

・日本住宅会議サマーセミナーin岡山

◆連載

・災害復興の姿9 復興から取り残される「在宅被災者」塩崎 賢明

・普通の景観考津波被災地の景観中林 浩

・新日本再生紀行〈 21 〉愛知県春日井市


主張

設立50周年を機に大いに議論しよう!

三浦 史郎

 

 設立50周年を迎える準備が東京の記念企画をはじめ、各支部・各ブロックで始まっている。皮切りとなった福岡での建築とまちづくりセミナーは量、質ともに大きな成果があった(本誌9月号特集参照)。この機に、新建設立当時1970年前後の記録資料を引っ張り出してみた(文末に参考文献記載)。

 設立時の「綱領」は現在「憲章」となっているが、「地域に根ざした建築とまちづくりを住む人使う人と協同してすすめよう」など、運動で明らかになった記述を加えて発展的に活かされている。この時期の記録のなかで、新建が「全国単一組織」となった経緯を興味深く読んだので、以下に紹介する。

 設立時の新建の母体となったのは、関西の「NAC」(約100人)、関東の「家」が付かない「新建築技術者集団」(約250人)、京都の「BEC」(約80人)、神戸の「神戸建築技術者交流会」(約50人)、名古屋の「計画者グループ」(会員数不明)が建築運動統一準備を始め、福岡・広島・石川・福井・岐阜・三重・群馬・北海道など27都道府県各地の建築運動が全国組織を嘱望し、連絡を取り合い結成にこぎ着けたとある。こうした系譜的なつながりを知ると連合体(UNION)が自然のように思える。しかし1970年は大阪万博開催の年、その準備期に建築組織内で大きな混乱があり、関東の集団では分裂の危機を招く事態に直面したという。そうした事情が反映されたことが「全国単一」と言う一本化が意識された一因だったのではないかと考えた(裏付けのない私感だが)。

 設立総会の基調報告「なぜ全国組織をめざすのか」という項では、それぞれの地域・職場の問題はそれぞれ独自の取り組みが必要であるが、「同時に、それぞれの問題は―中略―すべてが関連していて、総合的に統一して一緒に追求していかなければ、個々の問題も解決しない。その点で個人加入の全国単一組織としての力を発揮することが必要」(*1)としている。

 設立から1カ月、第1回常任幹事会の議事録では、「新建の準備段階で、全国組織の形態を連合組織にするか単一組織にするかで、長い時間を掛けて議論された。この討論の決着は設立総会によって、新建築家技術者集団が発足し、形の上では単一組織として運動が始まっている。しかし、理論的決着がついたわけではない。連合組織の主張者も、発足した以上、今の形態で発展させるよう全力を尽くすのが組織人のあり方であるという態度で身を処している。しかし主張は保留している。せっかちに結論を出す必要はないが、双方の論点を、今後の運動の実践の中で検証し、組織論、運動論として発展させてゆく見地からも、何人かの人で整理し、まとめていきたい。」(*1)となっている。松井昭光氏(新建創設に参加した、本誌初代編集委員長)は「全国単一組織だけでまとまるのでなく、―中略―綱領に反しない限り自由に自主的に活動しうる―中略―『連合体方式』の長所を取り入れるべき組織形態が望ましく、今までにない創造的組織形態―後略」(*2)と考察している。

 次の年(1971年)に開かれた第1回大会の「全国単一組織ということをどう考えるか」では、「基本的に『全国単一組織』の形態をとりながら、〝各職能、各地域の特殊性を明確にし、独自性を尊重しながら大きく運動としてまとまっていく〞という点の配慮は常にしていかなければなりません」としている。支部の独自性、独立性を十分尊重しつつ、連合組織的な面も取り入れていくとする柔軟な方針ということである。(*1)

 現在の新建の活動状況を重ね合わせると、多くの支部やブロックで、自主的、主体的に地道な活動が進められ、それが憲章を体現しているといえる。一方、設立時期の資料などを見ると、今の全国事務局からは「新しい建築運動」の提起が極めて弱くなっていることを感じる。

 今年4月の全国幹事会では「まちを、建築をどうしていくかは全国から提起するより、それぞれ地域で活動している中から発信するのが良く、一人で決めるよりグループ・支部で知恵を持ち寄るのが良い。そうすると全国単一組織としての〝UNION〞より、各支部の連合体の方が良い。」という意見も出ている。

 「運動の実践の中で検証し、組織論、運動論として発展させてゆく」とした意思を継ぎ、50年を経て、時代に相応しい建築運動を自ら問い直し、組織のあり方をこの機に支部で、ブロックで大いに議論しよう。

出典

*1 本多昭一著『近代日本建築運動史』ドメス出版、2003年

*2 松井昭光著『建築運動に詩あり』学芸出版社、2004年


第51回全国保育団体合同研究集会

  日時:2019年8月3日(土)~5日(月)  

  場所:名古屋 ポートメッセなごや他

 

8月3日から3日間、名古屋で開催された保育合研に、今年も新建会員10数人が集いました。昨年、大阪で開催された50回の記念集会を節目に、新たな一歩を踏み出す集会として位置づけ開催された今回の愛知合研では、これまで同様、保育や子育てに関わることをすべて実践的な課題とし、保育者・保護者・研究者など子どもに関わる人たちが、その時々の状況のなかで子どもたちにとってなにが最善かをともに考える、全体会の報告がありました。

全大会は、ポートメッセなごやで行われ、子どもたちの賑やかなオープニングに引き続いての情勢報告では、保育の現場が大変になっている問題の根底には、暮らしも貧しくなって、仕事も生活にもゆとりがなくなっている現状が話されました。子育て家庭に強い圧力が掛かり、弱者に怒りの鉾先が向くバッシング社会。そのようななかで、子どもが育つために大切なことは、子ども一人一人の願いが実現すること。それが自信や意欲につながり、相手の意見を聞いて学べる社会性が自然と身につき、周りの人たちの愛情に応えようと頑張る。「受けとめて欲しい子どもの姿」をしっかりと見ることの大切さ、障がい児さんの山登りへの取り組みの報告など、いくつかの報告がされました。

また、10月からの保育料の無償化に向けても問題点が指摘され、負担の大きい0歳から2歳児は対象にならず、3歳児からは給食費が徴収される。認可外保育所も無償化の対象になるが保育の質は問われていないので今後どうなっていくのか……。まさしく今、懸念されていたことが、現実の問題として露呈してきています。

 

さて、二日目の分科会はひさしぶりに「安全で豊かな園舎・保育環境づくり」に参加しました。4カ園の園舎の報告がありましたが、西日本豪雨災害により床上浸水した広島の園の報告があり、災害への対応とバリアフリーとの関係などいろいろと考えさせられました。
 私事ですが、保育合研に初めて参加したのは20年前の福岡合研です。その時は、設計者の参加はそんなに多くはなく、これから園舎を建てる保育園の園長先生が中心で熱心に参加しておられたのが印象的でした。近年はこの分科会に参加する設計者の人数も増え、そのせいかどうかはわかりませんが、前回の大阪合研では部屋に入りきらなかったとも聞いています。以前は、新建の関係者ばかりでしたが、今回は新建以外の新たな建築士の方も結構参加しておられて、「安全な園舎」の分科会の4分の1強は設計者だったように思い驚きました。反対に、近年参加し続けていた「無認可保育園」の分科会は、「小規模保育事業」に移行しなくなりました。「小規模保育事業」の分科会も今年は参加が少なかったようです。

保育に対する本質は変わっていないのでしょうが、時代とともにいろんなことが変化していることにも気づかされた合研でもありました。

(京都支部・成宮範子)

西日本ブロック会議報告

  日時:2019年8月31日(土)

  場所:大阪/OLA、福岡/アミカス

  参加:20名

8月31日(土)10時~17時、会場は大阪支部の伴さんの事務所OLAで、西日本ブロック会議が開催されました。参加者は岡山1名、大阪4名、京都5名、奈良4名、福岡はネットによる同時中継で6名、5支部から計20名でした。

まず最初に、大阪支部と関係が深く、新建のように専門家として住民の立場に立って活動している、図書館問題研究会の巽さんを招き、ミニ講演をしていただきました。図書館は本来「ひとづくり」「教育施設」「出会い」「つながり」「すべての人の居場所」であることを踏まえた上で、現在の政策的な問題として図書館運営の民営化や「儲ける図書館」づくりの問題、教育委員会管轄から首長管轄へ、が進んでいるとのこと。指定管理者制度により、にぎわいと儲け(入口にカフェと書店、奥に図書館)が重要視され、図書館司書が軽視されていること。指定管理大手による画一化(コンビニ化)が進んでいることを話されました。

また、最近の活動の紹介として、「図書館友の会」「堺市の図書館を考える会」などの市民運動に協力・支援する活動をしていること。東日本大震災直後に、被災地に滋賀県から移動図書館を寄贈したこと。東北の図書館問題研究会は図書館づくり運動で活発に活動していること。日常的には会員のいる図書館を訪問して、現状や悩みを聞き問題解決の支援をしていることを話されました。最後に今後とも新建とは協力協同していきたいという、心強い言葉をいただきました。

次に、各地の状況と支部の取り組みについて報告があり、奈良支部は、支部設立30周年の記念誌づくりの取り組みについて。京都支部は、新建叢書を語る会(すでに3回開催して、次は現地を見てまわる予定)についてと、廃校小学校がホテルに建替えられている状況について。大阪支部は、中之島公園を考える会を毎月継続しており、来年5月5日には支部設立50周年企画として、中央公会堂で中之島の保存運動の歴史とこれからの中之島公園を考えるシンポジュウムを予定していることについて。岡山支部は、住宅会議のセミナー(豪雨災害からの復興)についてと、西粟倉村の話。福岡支部は、建まちセミナーの報告とセミナー復習会(9月11日予定)について、それぞれ話し合いました。

次に、久永議長から50周年事業特別委員会からの報告と提案がありました。来年11月に研究集会と合せて、全国記念企画を開催することについて、通常の研究集会との関係や内容について話し合い、他になにか目玉企画(コンペとか)を考えてはどうかなどの意見が出ました。

次に、西日本ブロック50周年企画について提案・検討し合いました。日程は来年2月下旬か3月とし、会場は大阪で開催することが決まりました。内容は藤本昌也氏の記念講演と、他に各支部から今後の展望を語り合う企画の話などが出ました。

最後に、「建築とまちづくり」誌の2020年年間特集について、予定と内容の詰めについて話し合いました。会議後の懇親会は、大阪はOLAの事務所で、福岡は居酒屋に場所を移しましたが、ネット中継は継続し、それぞれの会場で盛り上がりました。

(大阪支部・栗山立己)

「豪雨災害と住まいの復興」――日本住宅会議サマーセミナーin岡山

  日時:2019年9月9日(月)~10日(火)

  場所:岡山

  参加:60名

 

今年も巨大台風による被害、豪雨災害が相次ぐなか、「豪雨災害と住まいの復興」をテーマに日本住宅会議のサマーセミナーが、西日本豪雨で大きな被害を受けた岡山で開催された(9月9日、10日)。参加者は60人、NHK、毎日新聞などのマスコミの取材も入り、報道された。

 

強い台風と気候変動で激増する極端現象

セミナーは、最初に基調講演「気候変動と極端現象――人と災害の間合いを考える」を寺尾徹教授・香川大学が行った。寺尾教授は気候変動で「極端現象」は増え続け、豪雨頻度も増加していること、「非常に強い台風の増加は始まっている」との説もあると述べた。そして、「災害をもたらす極端現象の定義は、地域ごとに異なる基準によって定められる必要がある」と提起し、地域の特性をよくとらえた対応の必要性を強調した。

 

岡山の水害、土砂災害、住宅再建支援

講演の後、6氏から報告が行われた。「岡山の水害――被害と原因」を磯辺作・放送大学客員教授、「土砂災害と住宅復興」を田中正人・追手門学院大学教授、そして「住宅再建支援制度の課題」を大山知康・岡山弁護士会弁護士が行った。磯辺氏は「地球温暖化が急速に進んでいるだけに、豪雨災害に対する行政などの十分な対策が行われなければならない」と指摘した。田中氏は「何が住宅復興を阻害しているのか、公的住宅の『制約』、土地利用の『制約』」を問い、「住宅政策から一般政策へ、災害公営住宅の新たな試み」を提案した。大山氏は「災害が頻発する現在、生活再建支援法の改正が急務」であり、「適用地域、半壊以下、支援金、国の負担」などの改正点を示した。

 

被災(精神障害)者、避難所の課題、移動型仮設住宅

前記3氏とともに、「西日本豪雨で被災した精神障害者グループホームから」を多田伸志・岡山マインド「こころ」代表理事、「避難所の課題とあるべき姿」を水谷嘉浩・避難所・避難生活学会理事、「移動型仮設住宅の実践」を長坂俊成・立教大学教授の3氏が報告した。水谷氏はイタリアの実例を示し、「86年間変わっていない日本の避難所」の実態を告発し、「海外の先行事例を手本とし、避難所は最低限人間らしい生活を送れるようにすべき」ことを強調した。長坂氏は移動式木造の仮設住宅「ムービングハウス」の利用と備蓄について報告した(写真1)。

 

討論――災害救助法の課題など

報告を受け活発な討論が行われ、最後に坂庭住宅会議理事の提起で、災害救助法の課題について、講師それぞれからの発言を交えて討論した。大規模災害にしか適応されないことの問題や、避難先を段階に応じて移動することが認められていないことの問題が指摘された。自治体による対応格差があることについては、「防災庁」として専門省庁を独立させ、国が主導して支援レベルの底上げをはかるべきという意見の一方で、国の枠にしばられずに、現地の状況に応じて自治体の裁量で支援ができることの重要性を訴える意見もあった。塩崎理事長からは、それを可能にするには、地方自治体にマンパワーと予算と情報があることが必要だとの指摘がされた。

 

見学会――真備町の被災地と第三の仮設住宅

2日目の見学会では、磯部氏の案内で真備町の被災地を車窓などからめぐり、柳井原仮設住宅団地を訪問した。柳井原仮設住宅は、トレーラーハウスやムービングハウス51戸がはじめて本格的に導入されたところで、長坂氏のコーディネートで11人の入居者の方々と意見交換がおこなわれた(写真2)。狭さ、玄関庇がないなどの問題はかかえながらも、概して住み心地がよいという意見が語られた。立地に関しては、公共交通機関がなくクルマでの移動に頼らざるを得ないことなどの問題も出された。

(東京支部・坂庭国晴)