2020年11月(No501)

特集 新建を豊かにする各地の活動──支部活動を振り返って

各地での活動の蓄積にあらためて感動──私を支えた建築運動を振り返る:今村 彰宏

【西日本】 福岡支部:鹿瀬島隆之/沖縄*:清水肇/大分:高橋和夫/熊本*:西村 正巳/長崎*:西村正巳/岡山支部:赤澤輝彦/山口*西尾幸一郎/鳥取*:片木克男/大阪支部:大槻 博司/兵庫支部:垂水英司+佐古誠司/奈良支部:川本雅樹/京都支部:川下晃正+蔵田力+久永 雅敏/滋賀支部:小杉光史/和歌山*:杉山 誠一 【中日本】愛知支部:中森 重雄/三重支部:市川史明/岐阜支部:藤吉勝弘+横山正幸+森田好隆/静岡支部:大塚功二/長野支部:山住博信/山梨*:安藤周春/富山支部:中野健司/福井支部:櫻井康宏/石川支部:杉山真+永山孝/新潟支部:廣田敏郎【東日本】神奈川支部:増田成司/東京支部:千代崎一夫/千葉支部:鈴木進/埼玉支部:西沢恒善/群馬支部:新井隆夫/栃木*:冨田和則/茨城*:乾康代/宮城支部:小椋正博+岩渕善弘/岩手支部:冨岡朗/青森支部:大谷 政彦/福島*:鈴木浩/北海道支部:女鹿康洋

※支部ニュース表紙一覧

 

西日本ブロック主催新建設立50周年企画  藤本昌也氏講演会

新ローカリズムの思想を語る……建築人としての「理念」と「作法」

新しい形式の全国研究集会を開催します

◆新建のひろば

新建福岡支部─「被災マンションAの軌跡と専門家のサポート」Zoomセミナー

東京支部企画─新建設立50周年記念オンライン連続講座「ドキュメント アメリカの建築」開講中

◆連載

世界の災害復興から学ぶ(10)》福井地震からの復興        室崎 益輝

《日本酒蔵紀行 》竹原市竹原                  赤澤 輝彦

《暮らし方を形にする( 10)》里山の風土になじむ杉の家      山本 厚生+中島 

主張

新しいスタイルの研究集会に期待する 星厚裕 (株)アート設計事務所/新建全国常任幹事

今年の研究集会はコロナ騒動の影響で開催は難しいだろうと思われましたが、全国常任幹事会や全国幹事会で開催について討議や検討がなされ、2年に一度の開催なので本来ならば集まって報告討論することが望ましいのですが、開催の方法としてオンラインで開催することになりました。新建の設立五〇周年の年でもあります、記念すべき研究集会ですが、新建史上初のオンラインでの開催ということになりました。研究集会のスタートは早い分科会で11月に予定しているところもあります。全体として来年の8月頃を目途にまとめ、報告集を作成する予定です。全国としてオンラインの準備をしました(詳細は本号を参照してください)。

 研究集会の各分科会は、今までの分野を踏襲しておりますが、その「開催日時については、各分科会ごとに、自由に設定することとし、同日、同時間にしなくてもよい」ということとなりました。

つまり、各分科会が参加者の都合などで自由に決められることです。また、分科会の参加者は都合がつけば、いくつもの分科会に参加できることになり、メリットの一つです。さらには今までの分科会では一つの分野で合計4時間程度でしたが、これにも制限はありません。その分科会の参加者が開催時間や回数など必要に応じて決めればよいということになり、まとまった報告や討論ができるということになります。これもメリットです。

 分科会の内容についても幅が広がると思います。分野は同じでもテーマを変えてパートⅡを開催す

ることが可能になります。時間があればテーマを変えていくつもできるのではないでしょうか。一つのテーマでも関連する別のテーマの課題や問題に展開できると思います。

 今まで私の担当した福祉の分野での分科会では、障害者のための地域での居住施設や作業所などの

いわゆる生活施設、高齢者の地域での生活を支える小規模多機能施設や特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、子どものための施設では、保育園、こども園、児童デイサービスなどのテーマで分科会を開催しました。研究集会の分科会は二日間で初日二時間、次の日に二時間の時間配分で、初日がテーマの課題などの報告や事例の報告、二日目はそれについての質問や討論など。また、初日はテーマⅠについて報告・質問・討論、翌日はテーマⅡについて同様に行うなどで分科会を行ってきました。

 今回の研究集会はオンラインのメリットを駆使し、福祉という同じ分野でも、もう少し細かいテーマ別で開催し、かつ関連するテーマを横方向の視点で討論することなど、時間を気にしないで開催できないかと思っています。また、福祉の分野というよりは「地域の生活」を俯瞰した視点で見ると、また別の課題が出てきそうなので楽しみにしています。当面は今までのテーマで報告の参加者をお誘いして、まずは手堅くいきたい。また何度でも開催できるので、関連する課題やテーマを新たな参加者も加えて、分科会を開催できることを楽しみにしています。時間制限がないので、報告や討論の続きも開催できます、納得のいく分科会になるかと思います。

 今回の研究集会は思わぬ事故(コロナ)にあったようなものですが、視点を変えれば新しい研究

集会の形態が見えたような思いです。各分野で今までの研究集会では消化しきれなかったようなこ

とでも今回は乗り越えられるかもしれません。これを機会に、各分野で全国の会員の経験や技術の

蓄積がより進化した形で継承できると確信します。

新建設立50周年記念特集─10 新建を豊かにする各地の活動-支部活動を振り返って

新建築家技術者集団(新建)は、全国に25の支部があり、支部の無い11の県に連絡所を設けています。本号の特集は全国の支部と連絡所からの報告です。すべての支部や連絡所の会員からの報告が一斉に掲載されるのは初めてのことです。今までぼんやりとしか見えなかった、全国の会員たちの姿がはっきりと見えてきました。特に、支部のない県での会員の活躍には驚くばかりです。

 多くの支部からは、支部設立時からの経過が紹介されています。詳細は、各支部の報告や「各支部の新建活動を振り返って」を見ていただきたいのですが、全国組織が50年前の1970年に設立され、その後各地域では支部の結成が相次ぎました。報告では、結成準備会で奔走する姿、多くの著名な建築家を迎えての講演会では講師の顔ぶれや参加者の数など、今では考えられないほどの盛況さが見て取れ、当時の高揚した雰囲気が伝わってきます。一方で大資本等による再開発に抗して、各地で歴史的建造物や景観の保存運動にも積極的にかかわってきました。生活環境の悪化につながる高層マンション反対運動などにも参加しています。

 今回の報告者の方々は、支部の歴史を掘り起こす中で、当時の多様でエネルギー溢れる活発な新建活動に驚かれたのではないでしょうか。このエネルギー溢れる活動を引き継ぎ、これからの活動の糧としていきたいものです。

 新建活動は原則的に支部単位で行ってきました。その中で支部のない県で、会員の方々はどのよう

にされていたのでしょうか。多くの方が新建とのつながりは『建築とまちづくり』誌を通してのみと語られています。しかしその一方で、仲間たちとまちづくりや景観保存など様々な活動が行われている様子がわかりました。支部がなくても立派に新建憲章に基づく活動が行われているのです。コロナ禍において、支部の交流や会議がWebを使ってより活発になっています。今後は、支部の有無にかかわらず、各地の活動を深めることにつなげたいものです。

 世界でそして日本でも新自由主義的政策や経済が推し進められています。しかし、コロナ禍は新自由主義的な世界が間違っていたことをあぶりだしています。新自由主義やコロナ禍により人々が分断されていく中で、新建は人々の生活や地域にねざした活動を続けています。今後も、新建憲章に基づいた活動は、一層強く求められます。

 今回の特集で、各支部の様子や会員の活動の一端が見えてきました。設立時のダイナミズムも目の当たりにしました。次の50年へ向けての新たな活動への手がかりをつかみたいものです。

 本特集が、新たな交流や活動の進展につながることに期待するものです。

特別編集委員/今村彰宏・片井克美

        特集担当編集委員/大槻博司・鎌田一夫・黒野晶大・桜井郁子・高田桂子・永井幸

◆新建のひろば

新建福岡支部-「被災マンションAの軌跡と専門家のサポート」Zoomセミナー

91日アミカスにてマンション管理士藤野雅子さんのお話を伺いました。 現地参加14名、Zoomでの参加9名で全国の方も参加いただきました。

 熊本Aマンションは熊本地震発生後、新建福岡支部で見学をしたマンションの一つです。(被害状況は写真をご覧ください)その概要を、阪神淡路や東日本大震災・福岡西方沖地震と比較して説明がありました。熊本地震の被害は全壊5765件の内マンションが17件(21棟)で、マンションの32

%が被害を受けたとのこと(他地震では10%台)。この違いはやはり一時期問題となったサムシング(構造計算書偽装)の影響もあるようです。

 築25年のこのマンション、全損の判定は出たものの、新築当時の構造計算の再計算がNGとなり、復旧工事をしてくれるところがありません。先が見えない、不安だらけの住民のみなさんは、裁判で設計者を訴える気力がなかったとのこと。公費解体を利用することで、敷地売却という道を提案し、限ぎりぎりの2017年暮れに全員合意まで持ち込んだ藤野さんの手腕。住民のみなさんの抱える不安に寄り添い、間髪を入れず行動された藤野さんの行動力に思わず拍手!

 結果的には14階建てのマンションの、2億円以上かかる解体費用を公費で賄えたこともあり、管理組合に残った積立金と、敷地売却益を住民のみなさんに十分な額ではないにしろ、ある程度の金額を還元できたそうです。いまだ意見もまとまらず、もめているマンションもあるとか……。

 後から届いた藤野さんからのメールを読み、なるほどと膝を打ちました。以下メールの概要です。藤野さんが被災した管理組合のみなさまと一緒に被災後の対応をしたとき、わからないことだらけだったが、その時たよりになったのが、東日本大震災を経験した専門家のみなさまのアドバイスだったこと。で、今度はそれをいろんな方に伝えていけたらよいなと思い、今回のお話をしていただいたとのこと。

 もし被災した場合、「診断は4つしかない」とか「早く申し込みをすれば役に立つ補助金もある」とか「有料だけど必要な診断がある」とかの話を思い出していただければ良いと思います。

 今後も被災後の行政の施策などは同じようなものが実施されるでしょう。行政の施策は締め切りが早いことも多いので、合意形成に時間がかかる分譲マンションは1日も早くはじめの一歩を歩みだすことが大事です。そのためには事前にうっすらでも被災後のイメージがあるのが有効だと思います……とのことでした。藤野さん貴重な講演ありがとうございました。

※診断4つ①応急危険度判定②罹災証明③被災度区分判定(有料)④地震保険(福岡支部・渋田あい子)

 

東京支部企画-新建設立50周年記念オンライン連続講座「ドキュメント アメリカの建築」開講中

1990年年代に作られた、ドキュメント・ビデオ「アメリカの建築」をオンラインで聴視し、担当会員の補足解説を交えて学びあう講座が始まっています。このドキュメントは、建築家ロバート・スターンを案内役に、建国時から現代まで分野ごとにアメリカ建築を概観するものです。様式建築、モダニズム、ポストモダンをヨーロッパや日本とは違った視点でとらえてみよう、というのが企画のねらいです。

 隔週水曜日の19時からの開講で、全国から30名近くの会員などが参加しており、なかなか勉強になると評判です。年末まで後半の講座はまだ間に合います。ぜひ参加下さい。今後のスケジュールや申し込み方法は新建のHPをご覧ください。              (東京支部・柳澤泰博)